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2016.08.03

韓国社会が大騒ぎ、「接待禁止法」の激震度

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国際NGOのトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)が毎年公表している腐敗認識指数(公務員と政治家がどの程度腐敗しているかの認識の度合いを示す数値)によれば、2015年の韓国は世界168カ国中の同率37位(日本は同率18位、中国は同率83位、北朝鮮は同率最下位)だった。一見、それほど悪くない数字だが、経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国に限って言えば27位という低い数字だ。

最近では、陳ギョンジュン検事長(49)が7月、収賄の疑いで逮捕された。韓国で現職の検事長が逮捕されるのは初めて。陳氏は2005年、大手オンラインゲームの創業者から4億2,500万ウォンを受け取って同社の非上場株式1万株を取得。06年に10億ウォンで売却した容疑のほか、高級乗用車を受け取った疑いも持たれている。

長らく政治的な影響力を維持してきた韓国検察では、幹部には「スポンサー」と呼ばれる経済的支援者がついているとされてきた。

また、今回の法律にはメディア関係者や私立学校の職員も対象になっている。日本では考えにくいが、韓国の記者が取材活動を兼ねた会食をする場合、身銭を切るケースはまずない。ほぼ全てにわたって公務員や企業がカネを払っている。海外の視察などに、記者を無料で招待するケースもあるという。

韓国政府関係者の1人は「文化の違い。カネを出して良く書いてもらおうという雰囲気が役所や企業に根強く残っている」と語る。元国会議員補佐官は「いつも記者から、酒を飲みに行こうと誘われた。もちろん、こっちで全部支払った。疲れていても記事が気になって断れなかった」と話す。

同じように、学歴社会の韓国では、少しでも良い成績、少しでも良い高校・大学への進学を願う父母から教育関係者への付け届けが絶えない。同研究院の資料によれば、父母の「寸志」は年間1,706億ウォンにのぼるという。

外交官だって笑っていられない。各国の外交官は政治家や韓国政府関係者に接近するため、よく贈り物をする。昔はオールドパーが有名だったが、今では日本の山崎など高級な洋酒もよく使われるという話を聞いたことがある。

韓国憲法裁判所は7月28日、新法が腐敗防止に必要だと指摘。「メディアや教育は社会に与える影響が大きい」として、対象者の範囲も問題がないとし、弁護士会や記者協会による違憲訴訟を退けた。

どのくらいの接待なら許されるのか、それぞれのモラルに任せるのが欧米や日本のやり方。しかし、韓国の場合、このくらいの荒療治が必要なのかもしれない。

文=牧野愛博

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