「水を使わず石から紙をつくる」スタートアップ・TBM、日本発世界へ

(c)TBM


また、LIMEXの工場を作れば、その場で製品の製造とリサイクルが行えるのも大きな利点です。日本のような島国では、離れた場所で製造しても少しの物流コストで製品を届けることができますが、例えば中国の沿岸部から内陸部への運送は、物流コストを考えると困難です。そんな物流の行き届かない場所でこそ、LIMEXは活躍できると考えています。

さらに人口増加で産業化が求められていく途上国にとっては、LIMEXの工場を建てることが、自国の資源を使った産業と雇用の創出に繋がります。LIMEXという日本の素材と技術、その両方を輸出することで、途上国に新たな産業を創出する——素材革命で、そんな未来を作っていきたいと思っています。

ーー創業から今年で5年。事業を行う上で、大きなブレイクスルーとなる出来事はありましたか。

我が社にとっては、13年の2月に経済産業省が実施した、イノベーション拠点立地推進事業の先端技術実証・評価設備整備費等補助金に採択していただいたことは、大きな前進でした。

スタートアップが対象となることは珍しく、大企業の新規事業が採択されることが多い中、日本に存在する唯一自給できる資源を活用して、輸入に頼らずに様々なアプリケーションを生み出すことができる点、そしてその技術を海外に工場として輸出できる点という、この2つのLIMEXが持つポテンシャルを評価していただけたのだと思います。

TBMの手がける素材事業は、スタートアップにとっては非常に大きな資金を必要とするビジネスです。しかし、我々が志を持って事業を始めたのは、日本にリスクマネーが存在しないリーマン・ショック後の時期だったため、資金調達にはかなり苦労していました。

工場建設の設備投資費の約3分の2の資金を、経済産業省に採択していただいた補助金によって賄うことができることが決まったことで、以前から関心を持っていただいていた投資家の方が中心となって、その残りの資金を投資していただくことができました。

その結果、我々にとって初めての自社工場を、宮城県白石市に設立するための資金を調達することに成功しました。この一連の資金調達が、現在の我が社の礎となる、画期的なブレイクスルーであったと言えると思います。
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文=山本隆太郎

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