「水を使わず石から紙をつくる」スタートアップ・TBM、日本発世界へ

(c)TBM

水や木を一切使わず、石灰石を原材料に、紙やプラスチックの代替物を製造する。TBMは、新素材「LIMEX(ライメックス)」で天然資源の枯渇問題に挑み、日本発世界で“素材革命”を起こそうとするスタートアップだ。

2011年に創業された同社は、現在「エコロジーとエコノミーの両立」をキーワードに、LIMEXの研究開発と製品の製造・販売を行っている。7月には米国で子会社を設立するなど積極的にグローバル展開を進めていくTBM社長・山﨑敦義に今後の戦略を聞いた。

ーー新素材として注目を集めているLIMEXの普及は、社会にどのようなインパクトを与えるのでしょうか。

LIMEXは、木や水といった地球上の貴重な資源を使うことなく、紙の代替品を生み出すことのできる素材です。通常の紙を1トン生産する際には、樹木が約20本、水が約100トン必要です。しかし、LIMEXは、地球上に安価で豊富に存在する石灰石を利用することで、木と水を使わずに紙の代替品を製造することができます。

また、製造できるのは紙だけではありません。加工方法や配合比率を変えることでプラスチックのような石油由来の製品の代替品も生産可能です。

現在日本で紙を生産するための資源であるパルプの多くは、海外からの輸入に頼っているのが実状です。しかしLIMEXが必要とする石灰石は、日本国内に安価で豊富にあるため、輸入資源に頼ることない生産が可能となります。主成分が無機物のため、リサイクルにも適しています。

また、我々がLIMEXで起こすイノベーションは、日本に限らず、世界中にインパクトを与えられると思っています。例えば、世界で深刻化する水問題。15年のダボス会議で発表された『グローバルリスク報告書』で、「今後10年で起こりうる一番深刻なリスク」として挙げられています。このグローバルな問題の解決に、水を使わずに紙をつくる新素材LIMEXは、大いに貢献できるはずです。

また発展途上国では、この水問題に向き合いながらも、人口増加に伴う、紙需要の増加に対応しなければなりません。ここにLIMEXが活躍するチャンスがあると、我々は考えています。

ーー“日本発世界”として、どのようにグローバル展開をしていくのでしょうか。

「現地にLIMEXの工場を建設する」ことで技術自体を輸出し、製造を行うことを想定しています。そして、製造には、現地の石灰石を利用します。これまで既存の製紙工場には、大量の水が使用可能で、なおかつ排水ができるロケーションにしか建設することができないという問題点があります。しかし、LIMEXの工場は、中東やアフリカのような水が乏しい地域の、比較的小さな土地にも建設することができます。
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文=山本隆太郎

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