7年前、私はフォーブス誌に、インポッシブル・バーガーの生みの親である著名生物学者パット・ブラウンの紹介記事を書いた。畜産業は環境にダメージをもたらすという考えに取りつかれていた彼は、誰もが納得する代用肉をつくりたいと考えた。そして、いつかマクドナルドが本物の牛肉を少量、または全く使わず、それでも消費者が満足するハンバーガーを売るようになることが夢だと言っていた。
あれからブラウンは1億8,000万ドル(約184億円)の資金を調達して、スタートアップ企業インポッシブルフーズ(Impossible Foods)を設立。血液を赤くする鉄含有色素ヘムの“野菜バージョン”を発見した。
私はチャンの手掛けるモモフク・ニシに、ハッピーアワーが始まる午後5時45分に予約を入れた。店に着くと、外には行列ができていた。席に着くと、両隣の男性はベジタリアン。2人とも、赤身の肉の味が恋しいと言っていた。
インポッシブル・バーガーの値段は12ドル(約1,225円)。隣に座っていた、カーリーヘアでがっしり体形のビーガン(完全菜食主義者)の男性の元に、最初にハンバーガーが運ばれてきた。肉の味の邪魔をしないようにと、レタスとトマトを抜いてハンバーガーを食べた彼の感想は、自分が覚えているとおりの肉の味だとのこと。
テーブルの端にいた別の男性(時々肉を食べるらしい)は、85%肉の味だという感想。私の反対隣りに座っていたもう1人のベジタリアンは、知人に「マクドナルドみたいな味」とメールしていた。
私は肉を控えるようにしているが、それでも週に2~3回は食べており、彼らよりは厳しい客だと思う。まだ動物の血の味に慣れている私の舌で味わった感想は、NYのガストロパブで出される分厚くてジューシーなパテよりも、レストランやシェイクシャックのハンバーガーに近い、というものだ。私はシェイクシャックのハンバーガーも好きだが、パンの分量が多くてパテが薄いハンバーガーは「肉」がそこまで感じられなかった。