「iPhone 6Sに特筆すべき点はない。ファーウェイのスマホの評判がとてもいいので、自分も使ってみたくなった」とヤンは語った。
中国圏のiPhone売上は33%のマイナス
アップルにとって中国は、売上高の30%近くを占め、最も成長が早い重要マーケットだった。しかし同社は7月26日、中国(香港・台湾を含む)の第3四半期の売上高が前年同期比33%減少し、88億4,000万ドル(約9,000億円)にとどまるとの見通しを示した。第2四半期の中国(台湾・香港含む)の売上高も同26%減の124億9,000万ドル(約1兆2,700億円)と低迷した一因は、ヤンのような“乗り換え組”の増加だ。
アップルの最近の製品は、中国企業の端末より魅力的とは言えなくなっている。市場調査会社Canalysのアナリスト、ジェイソン・ローは、「中国人はiPhone 6と外観や機能が大きく変わらないiPhone 6sに買い替えようとは思えなかったし、画面が小さいiPhone SEは、大きなディスプレイを好む現地消費者の関心を引けなかった」と指摘した。
対する中国企業は、中国人消費者がより高級な端末に買い替えるのに対応し、高価格製品の開発に力を入れ、アップルとの差を急速に縮めている。
市場調査会社ニールセン(Nielsen)によると、中国のスマホ市場における今年6月の300ドル(約3万1,000円)以上の機種のシェアは、昨年末から4.4%拡大し47.6%に増えた。一方150ドル(約1万5,000円)以下の端末のシェアは3.21%縮小した。
ファーウェイは25%の増加
中国メーカーの中でも快進撃を続けているのが、ファーウェイとOPPOだ。ファーウェイは自主開発したチップを高価格製品に採用し、バッテリーの持ちを改善する一方、スカーレット・ヨハンソンやヘンリー・カヴィルといった海外スターを広告塔にして、ビジネスパーソンを取り込もうとしている。これらの努力が功を奏し、ファーウェイの今年前半のスマートフォン出荷台数は同25%増の6,060万台になった。
OPPOは今年6月、23%のマーケットシェアを握り、ファーウェイ、サムスンを押さえて中国でトップシェアになった。同社は店舗の強力な販売力とセルフィーに特化した新製品R9モデルによって、業績を伸ばしている。
関係者は「中国企業はブランドイメージ向上に取り組んでいる。アップルがそんなにいいわけでなく、現地ブランドが悪くないなら、これまでのように皆がiPhoneに殺到することはなくなる」と語った。
中国当局は今年4月、アップルの電子書籍と音楽配信サービスを突然ブロックした。6月には北京市知的財産権局が、iPhone6は中国のスマホメーカーBaili(佰利)の製品を模倣していると認定するなど、アップルは中国当局の対応にも苦慮している。
とはいえ、現地のライバルが高価格帯セグメントでアップルに匹敵するレベルになったと結論づけるのは尚早だ。
Canalysによるとアップルは今年第1四半期、500ドル以上のスマホマーケットで55%のシェアを確保した。iPhone 6sをリリースした昨年の第4四半期のシェアは70%だったのに対し、昨年第3四半期のシェアは60%、第2四半期は67%だった。
「アップルが中国で苦戦しているのは、プロダクトサイクルの狭間にいるからだ。ファーウェイはP9とMate 8で成功したものの、主戦場はなお中低価格帯のセグメントだ」
IDSバイスプレジデントのブライアン・マーは、アップルが中国マーケットで輝きを取り戻せるかどうかは、次のiPhone次第だと指摘する。アップルCEOのティム・クックは7月26日のアナリスト報告で、「中国市場を楽観的に見ている。今後も驚くようなイノベーションを続ける」と語り、強気の見通しを維持した。
一方、アップルからファーウェイに乗り換えたヤンは、次世代iPhoneについてこう答えた。
「次のiPhoneの何が新しくなったのかには興味がある。私はアップルウォッチや、iPad、Macを持っており、それにつなげるスマホはやはり必要だ」