中国版ネットフリックスと呼ばれるLeEcoは、米国進出の地盤を固めようとしている。調査会社IHSは「LeEcoはVizioの買収で、アメリカのテレビ市場を研究する手間が省けます。Vizioは米国のテレビビジネスに精通しており、小売業者や国内のコンテンツプロバイダーとも良い関係を築いています」と分析する。
IHSによると、Vizio買収後のLeEcoのテレビ出荷台数は2015年ベースで世界6位となる。格安テレビで知られるVizioは北米2位のテレビメーカーだが、2015年度は売上30億ドル(約3,062億円)に対し利益が低かった。LeEcoは中国で7位のテレビメーカーだ。
北米2位のTVメーカーVizioを買収
アメリカでは毎年およそ3,000万台のテレビが売れており、メーカーも多く市場規模が大きいため、政府もLeEcoによるVizio買収に反対しないだろうと、調査会社IDCのリサーチ・マネージャーであるジョナサン・ゴー(Jonathan Gaw)は言う。「買収によってシェアが集中したり他のメーカーに脅威になったりすることはないでしょう」
その競争の激しさを表す例として挙げられるのが同じく中国のテレビメーカーであるハイセンス(海信)で、北米における生産体制とロジスティクスの強化を行っている。
創業12年で北京に本拠地を置くLeEcoは、動画配信も行っており、アメリカでも動画配信を始めるかもしれない。LeEcoのCEOは、買収完了後に“完全なエコシステム”を提供するとしている。だからと言ってアメリカで中国のプロパガンダ映像を流すわけでも、中国で制作したアクション映画を流すわけでもない。
配信するコンテンツに関しては、米国人の好みの分かるVizioに任せるようだ。Vizioはすでにコンテンツプロバイダーと協力し、同社のテレビでインターネット動画を流す計画を進めている。
LeEcoのCEOはグローバライゼーションを目指しており、Vizioの経験がLeEcoにとって中国だけでなく他国におけるビジネス戦略にも役立つかもしれない。アメリカ以外の国に進出していないVizioにとっても、中国をはじめとする海外に打って出るチャンスとなりそうだ。
IDCのゴーは「今後、アメリカのエンターテイメント産業と中国のメーカーは相互に影響を与えることになるでしょう」と語った。