ジュリアーニ元NY市長に学ぶ、危機の受け止め方

ルドルフ・ジュリアーニ元NY市長(2001年11月8日撮影、Photo by Mario Tama/Getty Images)

今年4月、熊本・大分を襲った地震で多くの人が被災した。地震のみならず、テロ、戦争、突発的に起こる悲劇を目の前にしたとき、あなたはどんな態度を取るだろうか。

ジュリアーニ元NY市長は賢人を思いだした。ハーバード大での授業から、2001年9月11日に発生した米国同時多発テロ時のジュリアーニ市長の言葉を紹介する。

10:56 グラウンドゼロよりラジオ生出演

冷静に行動し、マンハッタン南端部から避難してください。北に向かって進み、カナル・ストリートを越えてください。そこまで行けば、マンハッタン南端部にいるよりもずっと安全です。

14:40 記者会見

命を失われた多くの人々に対して言葉もありません。しかし市は生き残ります。我々がいま集中しなければならないのは市が困難を乗り越えて生き残り、この苦難を糧としてさらに強くなることです。

記者:アラブ諸国では今回の事件を聞いた人々が通りで踊っているのをご存じですか? 

市長:憎悪、偏見、怒りがこの恐ろしい悲劇を生んでいます。しかし、ニューヨーク市民には違った方法があるはずです。我々は勇敢で忍耐強いやり方で立ち向かおうではありませんか。

16日 記者会見

チャーチルを描いた『ロンドンの5日間』を掲げながら会見した。

私はこの事件を大局的に見ることが重要であると考えています。このような攻撃を受けたのは何も我々だけではありません。私は英国がナチスによる空爆を受けた際の話を読んでいます。市民、そして民主主義が攻撃されました。しかし、彼らにはそれをはね退ける強さ、意志、そして勇気があったのです。

大変な損失を受けたとはいえ、NYはまだここに存在し、明日の朝も存在し続けます。皆さん、いつも通り買い物やレストランに出かけ、今回の攻撃をものともしない姿勢を態度で示してください。

本日、私は新婦ダイアン・ガルンバの父親代理役として結婚式に参加します。ダイアンの母親、ガルンバ夫人より「娘と一緒にバージン・ロードを歩いてほしい」と頼まれました。夫人から、1年という短い間に父、夫、息子の3人を失ったことを聞きました。

私は夫人に、どのようにして悲しみを克服してきたのかと尋ねました。夫人は、自然の感情である悲しみを受け入れることにし、娘の結婚や自分に残された人生の喜びの部分に目を向け期待感をもって生きるように努力している。誰もがこのようにして悲しみを乗り越えなければならないと話してくれました。

レジリエンス、どんな困難に直面しても挫けることなく力強く回復するにはどうしたらよいか? チャーチルの言葉を思い出す。「悲観主義者はあらゆる機会のなかに問題を見いだす。楽観主義者はあらゆる問題のなかに機会を見いだす」


熊本・大分で地震が起きた。発生したことは変えられない。しかし、それをどう受け止め、行動するかは本人次第だ。

うらしま・みつよし◎1962年、安城市生まれ。東京慈恵会医大卒。小児科医として骨髄移植を中心とした小児癌医療に献身。その後、ハーバード公衆衛生大学院にて予防医学を学び、実践中。桜井竜生医師と浦島充佳医師が交代で執筆します。

文=浦島充佳

この記事は 「Forbes JAPAN No.24 2016年7月号(2016/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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