この投資は割高でリスクも大きかったが、結果的にはシリコンバレーの歴史において最も成功した投資案件の一つとなった。株式の半分以上は売却済みだが、ヤフーが当初取得したアリババ株の現在の評価額は800億ドル(約8兆3,200億円)を超える。
ヤフーは7月25日に中核事業をベライゾンに48億ドルで売却すると発表した。これは、15年前のピーク時の時価総額とは比べ物にならないほど低い金額だ。売却対象には、アリババやヤフージャパンの株式は含まれない。
皮肉にも、アリババへの出資の成功が、結果的にはヤフーを身売りへと追い込んでしまった。ヤフーは検索やソーシャル、モバイルなどの新たなテクノロジーの波に乗り遅れ、中核事業のニュースやメール、広告テクノロジーはここ数年不振に喘いでいた。しかし、アリババ株を保有していなければ、独立企業として存続することは十分可能だったのだ。
危機の発端はアリババの上場
ヤフーを危機に追い込んだのはアリババのIPOだ。アリババは2014年9月にニューヨーク証券取引所に上場し、史上最大の株式公開を果たした。すると、ヤフーの株主らは同社が保有するアリババ株の価値が中核事業の価値を大きく上回ることに気が付いた。
仮にアリババ株を市場で売却した場合、 38%の税が課せられるために税額は100億ドル以上となり、それだけでヤフーの中核事業の価値を超える。実際、あるアナリストがヤフーの時価総額に占める中核事業の価値を見積もったところ、マイナス値になったという。
このため、株主らにとっては、アリババ株(ヤフージャパン株も同様)を非課税で売却する方法を見つけることが最優先課題となった。ブルームバーグ・ビューのコラムニスト、マット・レビンは昨年12月に次のように述べた。
「ヤフーが最も恥ずべきなのは、アリババ株に対する課税回避が会社を存続させる理由になってしまっていることだ。数字を見れば、これが決して大げさでないことがわかるだろう。アリババ株に課せられる税額は、ヤフーの全事業の価値の少なくとも2.5倍ある。課税を逃れる方法があるのであれば、全社員がその業務に毎日従事した方が通常業務をするよりも株主の利益に適っているのだ」