ポケモンGOは7月22日の日本配信開始から1日足らずで「パズドラ」や「モンスト」を抜き去りiTunesのトップセールス首位に躍り出た。これに対しソーシャルゲーム業界関係者からは次々と「ポケモン脅威論」が浮上した。
アプリ業界に詳しい小倉大介氏は「ポケモンGOに殺されるアプリ市場と広告市場」と題したブログ記事で、ユーザーの可処分時間を奪い尽くすポケモンGOは従来のゲームの利用時間を奪い、売上を激減させるとの持論を展開。口コミのみで人気を獲得したポケモンGOは、数億円レベルのテレビCM費用が投じられる広告ビジネスをも破壊するとも懸念されている。
また投資関連ニュースサイト「Market Hack」も、オンライン・ゲームから多くの売上を得ているLINEもポケモンGOに「ぶっ殺される」リスクがあると述べた。
ポケモンGO上陸から数日が経過した現在、関係者らは現状をどう捉えているのだろう。ドイツ出身で海外の投資家向けに日本のモバイルゲーム情報を提供するカンタンゲームス代表、セルカン・トト氏に話を聞いた。
「パズドラ」には影響無し
――ポケモンGOの日本上陸はソーシャルゲーム業界に壊滅的打撃を与えるとの憶測も流れました。現状をどのように分析しますか?
配信開始後、初めての週末を終えた7月25日時点のデータでは、「パズドラ」や「モンスト」といった大手の売上にはほとんど影響が出ていません。私は、ポケモンGOは既存のゲームとは全く違った客層を獲得したと見ています。ポケモンGOは誰にでも理解可能で、操作も簡単なカジュアルなゲームです。
パズドラやモンストは、収益の大半をごく限られたゲーム中毒的な客層から得ています。こういった層はポケモンGOが上陸したからといって、すぐに今遊んでいるゲームから離れたりはしません。
ただし、パズドラやモンストを運営するガンホーやミクシィ等の企業にとっては今後、コア層をいかにつなぎとめるかが一層重要になります。さもなければ、彼らのビジネスは危機に瀕します。
――日本のモバイルゲームは世界から見ると非常に特殊で、グローバル市場から孤立した“ガラパゴス状態”という見方もありますが。
一般的にはそう捉えられています。しかし、ここ数年で状況に変化が生まれつつある。ストアの売上ランキングの上位を見てみれば、ヨーロッパや米国、韓国のゲームが入っていることに気づきます。5年前の日本のソーシャルゲーム市場は本当に閉ざされた世界でしたが、外国勢の流入は進んでいます。そんな流れの中でポケモンGOは上陸したのです。