そのヤフーは7月25日、中核のインターネット事業を約48億ドル(約5,033億円)で米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズに売却すると発表した。スミスにとっては、自らが思い描いた計画をほぼ完遂したともいえるだろう。
ヤフーを買収したベライゾンは今後、インターネット事業を拡大していく考えだ。傘下のネット大手AOLを率いるティム・アームストロングCEOの下で、重要度をさらに増しているデジタル関連事業を推進する。ヤフーの次なる(そして残された最後の)仕事は、自社が保有する重要資産である中国の電子商取引大手、阿里巴巴集団(アリババ・グループ)株とヤフー・ジャパン株、保有する知的財産などの売却となる。
スミスとスターボード・バリューにとっては、2年近くに及ぶアクティビストとしての活動が、成功したことを示すものといえる。
しかし、実際にはそれは、ほぼ感情的な勝利にすぎない。ヤフーの最近の株価は、スミスがAOLとの合併を要求した当時とほぼ変わらない水準だ。22か月間にわたってヤフー株を保有してきたことは、何の見返りももたらしていないということだ。つまり、アクティビストたちはこの間、さまざまな活動を行ってきたということでもある。
委任状争奪戦を示唆
スミスがヤフーとAOLの提携に関する詳細な分析の結果を提示した後、ヤフーと同社のマリッサ・メイヤーCEOは、スミスの提案とは異なる行動を取ってきた。
ヤフーは2015年1月、保有しているアリババ株の15%をスピンオフする計画を発表。非課税の売却であり、手元に入る現金は直接株主に還元すると説明した。しかし、この計画は米内国歳入庁(IRS)によって阻止され、見込まれていた数十億ドルがヤフーの手に入ることはなかった。
スミスをはじめとする株主たちは、ヤフーのこの計画に慌てふためいた。メイヤーがヤフーの資産を食いつぶしてしまうのではないかと懸念したのだ。そして、スミスは今年初め、ただ声高に批判する以上の行動に出なくてはならないと心を決めた。