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2016.07.25

中国が「島ではなく岩」と抗議の沖ノ鳥島に、日本が100億円を注ぐ理由

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日本最南端の島「沖ノ鳥島」はわずか9平方メートルの広さだが、日本政府は約100億円を投じ、セメントと棒鋼で防波堤を作り、サンゴ礁生態系の活性化も図っている。

アジアの国々は太平洋の玄関口に位置する沖ノ鳥島が日本に属していることには異論はないが、中国はそれが「島ではなく岩だ」と主張している。中国は南シナ海の95%の領有権を主張しているが、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は先週、その主張を退け、中国がフィリピンの漁業権を侵害しているとの判決を出した。

裁判所はさらに、南シナ海で中国が「島」と主張するものは実際には「岩」であり、排他的経済水域(EEZ)は生じないと判断した。領有権を認められなかった中国政府は、日本も同じことをしていると世界にアピールしようと考えている。

中国外務省の報道官は5月、「EEZと大陸棚の権利を主張するために日本が沖ノ鳥礁を島と分類するのは、国連海洋法条約(UNCLOSI)に違反している。日本の主張は違法であり、中国は認めない」と述べた。

日本と中国は油田や東シナ海の無人島の権利をめぐっても対立している。沖ノ鳥島は中国海軍が太平洋に出るのを阻止でき、日本にとって重要な海上交通輸送路の近くに位置する。日本は沖ノ鳥島で船を監視し、データを国土交通省に送るための3階建ての観測所を建設中だ。

中国のワン・イー(王毅)外相は、2015年に開かれた東南アジア諸国連合の地域フォーラムでも「他の国のことを言う前に、日本は自分がやっていることを振り返った方がいい」と、沖ノ鳥島について言及した。

台湾の淡江大学で国際紛争を専門とする客員研究員ファブリッツィオ・ボザートは「中国は大量の砂とコンクリートで島を作ったのに対し、日本の沖ノ鳥島の埋め立ては自然保護が目的という点が最大の違いだ」と述べている。

編集=上田裕資

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