安邦保険集団は、この10年ほどで飛躍的に成長した中国企業の1つだ。2004年に財産保険会社を設立し、翌05年、生命保険会社として資本金5億元でスタートしたが、その後わずか10年で資本金は619億元にまで膨らんだ。
中国では、全国的に保険業務を展開して3,500万人もの顧客を有している。その一方で、深センの不動産大手「万科」や、「中国民生銀行」「招商銀行」といった大手の民間銀行に投資。やがては投資先を国外にまで広げ、14年にはベルギーの「フィデア保険」や、260年もの歴史をもつ「デルタ・ロイド銀行」を買収した。
その後もオランダの「ビバット」、韓国の「東洋生命保険」、アメリカの「フィデリティ・アンド・ギャランティ・ライフ」など、金融・保険分野での買収に貪欲に取り組んでいる。
その勢いはとどまるところを知らず、14年にアメリカ、ニューヨークの老舗高級ホテル「ウォルドーフ・アストリア・ニューヨーク」を65億ドルで購入するなど、金融・保険分野以外の買収にも乗り出した。
「シェラトン」などで知られるアメリカのホテル大手スターウッド・ホテルズ&リゾーツ・ワールドワイドの買収を巡る、アメリカのマリオット・インターナショナルとの駆け引きでは、結局、16年3月末に撤退を決めたものの、世界の耳目を集めることとなった。
安邦保険の呉小暉CEO(49)は今年、ついにフォーブス「世界のビリオネア」ランキングの仲間入りを果たした。呉自身はメディアに露出することがほとんどなく、その経歴すら明らかにしていない。その一方でしばしば話題になるのは、彼の婚姻関係だ。
呉は、浙江省温州市平陽県の工商局の役人としてキャリアをスタートさせた後、3回結婚をしている。最初の妻については不明だが、2人目の妻は浙江省の副省長や杭州市市長を務めた人物の娘。
香港「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」中国語版によれば、90年代、温州で起業した呉は、自動車リースや販売などのビジネスで大きな成功をおさめた。上海汽車集団の最大の販売会社となったほど勢いがあったのだ。その背景には、間違いなく義父の影響力があったと言われている。
だがその後、呉は2人目の妻と別れ、3人目の妻を娶った。呉の婚姻関係が注目されるのは、この3番目の結婚による。相手とはなんと、トウ小平の孫娘だったのだ。