実際に、安邦保険について政府の審査や許可は他社よりも迅速だといわれてきた。呉小暉は政府の関連部門に自由に出入りできる関係を築いており、当然ながらそこにはトウ小平の孫である妻を介したコネクションが存在するのではないかと見られている。また香港紙「アップルデイリー」がかつて、陳小魯が「“紅いコネクション”と、会社(安邦)の急速な発展とは無関係ではない」と話した、と伝えたこともある。
しかし、安邦保険の成長にこのところ影が差し始めているとみる向きもある。15年初め、トウ小平の孫娘とはすでに離婚していることが明らかになった。
さらに陳小魯も、中国の経済誌「財新週刊」に対して「私は顧問に過ぎず、株式も持っていなければ給料ももらっていない。経営には介入しておらず、戦略について相談にのっているだけだ」と語っている。
中国国外で活動する中国語メディアの中には、その背景には習近平が推し進めている反腐敗運動があると分析するものもある。いまや取り締まりの手は共産党中枢にまで及びつつある。元幹部の家族たちは風を察知し、保身のための対策を次々と打っているというのだ。
*トウ小平(Deng Xiaoping)1904年、四川省生まれ。毛沢東の死後、97年の死去まで党と軍でリーダーシップをとり続けた。文革時代を含め3度失脚し、3度復活。改革開放路線を敷いた。
*呉小暉(Wu Xiaohui)1966年、浙江省温州市生まれ。故郷の平陽県工商局などに勤務した後、起業し、実業界に転じる。04年に陳小魯らと安邦保険を設立、CEO兼取締役会長となる。