経営にも相通じる「プロゴルファーの究極の決断」

ニュージーランドのゴルフ場 ジャックス・ポイント(Mark Daffey / gettyimages)


世界のリンクスを旅している私も改めて感動する絶景のコースで、バンジージャンプやハンググライダーを楽しむ客を乗せた飛行機が離着陸を繰り返すなか、山々と湖と羊と、そして飛行機を見ながらトッププレイヤーと回る3日目のイベントは、本選にはない楽しみだ。もちろん仕事熱心で人気があるジョン・キー首相も参加である。

ブランド選手によると、豪州、NZ地域だけでは年間を通してのツアーは開催できず、日本ツアーとの共催は大変ありがたいことらしい。ジェイソン・デイとアダム・スコットと世界トップを競う2人を輩出するエリアではあるが、確かに彼らも主戦場はPGAツアーである。日本の男子プロも人気が落ちてきており、今年は年間たった26試合と寂しい限りであるが、それを思えば一概に文句も言えない。

本選は最終ホールまで谷原秀人選手が1打リードする展開だったが、最終ホールを谷原がボギー、オーストラリア出身のマシュー・グリフィン選手がバーディーと劇的な逆転で幕を閉じた。72ホール回って最後の最後で勝負が決まる。本当に厳しい世界である。

誰のせいでもなく、すべて自分の責任でジャッジして、すべての技を出し尽くしても最後の最後まで勝負の行方はわからない。スコアカードにも公式記録にも、どのクラブを使ったか書く欄はない。競技上許された14本のクラブを自分の判断で選び、駆使して戦うこのスポーツは、精神的にもかなりきついスポーツだなと改めて感じた。

往年の名アマチュアプレイヤーのボビー・ジョーンズは、「敵は相手のプレーヤーではない、パーおじさん(Old man Par)だ」という名言を残した。同じく生涯アマを貫いた中部銀次郎も一打に込める意気込み、気迫が迫ってきたと言われている。プロゴルファーは一打の重み、経営者はひとつの判断の重み、これを肝に銘じた今大会であった。

ニュージーランドの絶景を味わい尽くす

ジャックス・ポイントは、本選開催のザ・ヒルズ・ゴルフクラブから車で25分と程近い。コースはワカティプ湖に面し、リマーカブルズ山脈に見下ろされており、ニュージーランドらしい絶景を味わいながらプレーできる。ジャックス・ポイントという地名は、1862年の冬、ワカティプ湖で転覆事故が起こったとき、遭難者を勇敢に救ったのが先住民族マオリ族のジャックだったことに由来する。

こいずみ・やすろう◎FiNC 代表取締役CSO/CFO。東京大学経済学部卒。日本興業銀行、ゴールドマン・サックスで計28年活躍。現役中から、インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢・発起人、TABLE FOR TWO Internationalのアドバイザーなど社会貢献活動にも参加。お金のデザイン社外取締役、WHILL、FC今治のアドバイザー。

文=小泉泰郎

この記事は 「Forbes JAPAN No.24 2016年7月号(2016/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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