13,535min
1872年に発表された冒険小説「八十日間世界一周」は、ヴィクトリア朝時代に80日間かけて世界を旅する物語だ。「グローブ・トロッター」が誕生したのは、その25年後。世は、冒険旅行が大流行していた。
ヴァルカン・ファイバー素材で作られたトラベルケースは、当時主流だった革と比べてかなり軽く丈夫だったため、旅人たちはこぞって「グローブ・トロッター」のケースを求めた。しかしながら、ひとつの鞄を作り上げるには、職人たちの熟練された手作業が不可欠で、かなりの時間を待たなければならない。均一性、大量生産が美徳とされる大消費時代に生きる我には、想像することさえ難しいことかもしれないが、グローブ・トロッター社は、その工程を現在も頑なに守り続けている。
今回の数字「13,535分」は、日数に換算すると10日と9時間35分。もし物語が作られるよりも前に、この素晴らしい製品が世に出ていたならば...。ジュール・ヴェルヌは、トラベルケースが出来上がるまでの時間も加味して、タイトルを「九十日間世界一周」としていただろうか?
180億分の1の「マイ・トロッター」
「グローブ・トロッター」は、19世紀後半に南極探検を行ったキャプテン・スコットなど、大英帝国時代に活躍した冒険家たちのために生まれたブランドだ。120年近くたった今でも、当時と変わらぬ工程で作られるトラベルケースは、すべて熟練された職人たちの手作業によるもの。
その匠の術を、自分のためだけにつぎ込んでくれるビスポークオーダーは、日本の最新デジタル技術で作られた「マイ・アンリー・トロッター」(富士通デザイン、ニフティ、プライムキャスト)によって、実際の出来上がりを3D映像であらかじめ見られるようになった。
ボディ、ベルトなどすべてのディテールを65色のラインナップから選べる商品は、180億以上の組み合わせが可能。「世界でたったひとつだけの鞄」を、冒険家が愛した珠玉の指先が作る。(メイン画像のケースは240,000円〜*サイズ、オーダー内容により価格は変動。グローブ・トロッター/グローブ・トロッター 銀座 03-6161-1897)
1851年に開発されたヴァルカン・ファイバーは、特殊紙を折り重ねて作られたもの。成型が難しいとされるこ の素材を鞄に仕立てるには、職人たちの技なくしてはありえない。ヴィクトリア時代から受け継がれる足踏み機械(写真中)は、直角に曲がるコーナー部分を作るためのもの。ちなみにグローブ・トロッター社の工場で使われる機械は、すべて手動のものである。