ビジネス

2016.07.24

財閥の同族経営で、成否を分けたのは何か?[富豪のトリビア45 -Part9]

堤義明


〈浮利を追わず〉

住友家は銅山経営から発展したため、偶発的なビジネスチャンスで利益を得るような商売をしてはならないという住友家の家訓である。

第一次世界大戦の好況で商社設立の機運が高まった時期、古河財閥などが商社を設立した。しかし戦後恐慌で商社は軒並み破綻。「浮利を追わず」に従って、商社設立を踏みとどまった住友財閥と経営陣の判断は高く評価された。だが、実際は製造業主体の住友財閥に商社の経営のノウハウがなかったことが、商社を設立しなかった理由との見方もある。住友では戦後に住友商事がつくられまで、商社設立はタブーとされた。(菊地浩之)

Q. 6度の世界一長者を転落させた「堤家の秘伝」とは?

1987年から6度、世界一の長者となった堤義明だが、2004年の有価証券虚偽記載事件で、他人名義を利用した株式や土地保有の実態が明らかになった。「虎ノ門に西武グループ御用達の判子屋がある」といわれたその手法は、株式や土地を他人名義にしたことにある。

秘伝の策を考えたのは、実父で創業者の康次郎だ。衆議院議長でありながら、法の抜け道への執念はすさまじかった。実質的な不動産王になっても、名義を分散させて、法人税や相続税を抑えに抑え、また、学校法人への株の贈与を行った形にして、死後、息子の義明に寄付した株式を取り戻させた。

「一族の財産を散逸させないため」という守りの思想が生んだ策だが、過ぎたる欲は自らその咎を遺す。今年、義明は旧コクドの株をすべて西武HDに回収され、ついに堤家と西武との縁は切れた。
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文=Forbes JAPAN編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.24 2016年7月号(2016/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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