これに対しクイーンは即座に抗議。ツイッターで「無断使用をやめろ」と述べた。トランプは6月にも彼らの曲を無断使用しており、クイーン側は「法的手段に訴える」と述べていた。
クイーンの楽曲管理を行なう、ソニーATV音楽出版も声明を発表。「我々はドナルド・トランプに楽曲の使用を依頼した覚えは無い。トランプは繰り返し楽曲を無断使用しており、強い憤りを感じている。トランプは我々の抗議を無視し続けている」と述べた。
「許可は必要ない」、トランプ側の論理
しかし、トランプと共和党全国委員会(RNC)は楽曲の“実演権”の対価を、管理団体のBMIに支払っており、クイーンに許可を求める必要は無いと主張している。
音楽業界に詳しい弁護士のジム・ザムウォルトは次のように解説する。「例えば、テレビでの楽曲のライブ演奏に関しては許諾の必要が無く、使用料はテレビ局が一括して支払います。演奏が録音され複製物として販売される場合には、権利者との交渉が必要です。また、楽曲の歌詞に変更を加え、“派生物”とみなされる状態になった場合も、権利者との調整が必要です」
つまり、ミュージシャンたちはトランプのような政治家による楽曲使用を防げないというのが悲しい現実なのだ。トランプに関してはニール・ヤングやアデルも「無断使用をやめろ」と訴えている。しかし、トランプ側がBMIに使用料を払っている以上、それを止めることは出来ない。アーティストらはツイッターで盛んに抗議をするが、効力を持たないのが実情だ。
しかし、テレビで放映される選挙CMでの楽曲使用に関しては、話は別だ。2008年にジャクソン・ブラウンは彼の楽曲がジョン・マケイン大統領候補やRNCの選挙CMで無断使用されたとして訴えた。その結果、ブラウンは裁判で勝訴した。
また、2011年には前フロリダ州知事のチャーリー・クリストが、トーキング・ヘッズの「ロード・トゥ・ノーウェア」を無許可で選挙CMに使用して問題化。その後、クリストはYouTubeを通じバンド側に公式に謝罪した。