TPPの支持者は、議会が11月の選挙後から17年1月20日の新政権発足前の議会の“レイム・ダック(死に体)”の間に批准することを期待している。それが最善の結果のはずだ。トランプは、オバマ政権と、国務長官時にTPPを支持したヒラリー・クリントンを批判するために、選挙を通じて貿易を問題にし続けるであろう。
もう一つの関連する要因は、2016年2月13日に、アントニン・スカリア判事の急死によって生じた米最高裁判所の空席である。オバマ大統領は、メリック・ガーランド判事を指名したが、共和党の上院議員は、承認のための公聴会の開催を拒否している。もし、クリントンが11月に勝利し、民主党が上院の過半数を取った場合、共和党の上院議員は、新政権がより進歩的な判事を指名・承認するよりも、穏健派であるガーランドを承認したほうがよいと計算するかもしれない。そうなれば、“レイム・ダック”の会期は最高裁判所判事承認の公聴会に時間を取られ、TPP批准は議案とならない可能性がある。
これらの複雑な要因が絡み合うため、アメリカがいつTPPを批准するのか、そもそも批准するかどうかも、現時点では誰も予測できずにいる。