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2016.07.20 17:00

大金持ちはなぜ財団を作るのか[富豪のトリビア45 -Part8]

Pacific Press / gettyimages

富豪たちはいかにして巨万の富を手にし、何を考え、どう使うのか。大金持ちの生態を解き明かす「45のトリビア」を、12回に分けて紹介する。第8回目は、お金持ちの資産の使い道に関する疑問をまとめた。

Q 大金持ちは、なぜ財団をつくるのか?

想像してみてほしい。あなたが今日、10兆円を手にしたとしたら?ある運用会社の社長は、「10兆円を手にしたら、普通は眠れなくなる」と話す。「手にした大きなお金が世の中にうまく流れていく仕組みをつくらないと、怖くてしょうがない」のだそうだ。

何が怖いのか。前出の運用会社社長は言う。

「例えば、1兆円を無駄に使ってしまうと、自分のパフォーマンスの低さを世の中に示すことになる。失敗はできません。お金をもっている人には、どう運用し、何に使うのかについて、説明責任と社会的責任を負っているのです」

また、使い切れない大金を寄付したいと公言すると、いろいろな人が集まってくるようになる。寄付をしてほしい人、投資をしてほしい人、その一つひとつを審査して対応するのは大きな労力を伴う。慈善活動を公にしながら、寄付することはできないか?

その解決策の一つが、財団法人の設立だ。お金を使う目的をはっきりさせ、仕組みをつくって世の中に流す。財団が「透明性の高い財布」としての機能を担うのだ。

前出の運用会社社長は言う。

「財団をつくるのは、お金について、“自分が死んでも意思決定ができる仕組み”をつくっておくことが必要だからです。秩序立っていて、かつ機能的にお金を社会のために使う仕組みをつくっておく。莫大な資産をもつ人間にとって、このほうが安心です。財団は解散するまで、世代を超えて残る。変な人間に任せて、資産を毀損して世間に知られるより、健全に、文化を社会に根付かせる役割を担うことができます。欧米では環境保護の財団をつくるのは当たり前。環境保護や海洋保護はリターンがなくビジネスになりませんから、富豪が慈善活動としてやるしかないのです」

もちろん、財団法人の設立は、相続税対策という側面もある。特にオーナー社長の場合は、いざという時に株式を財団に寄付すれば、個人の課税負担を減らしつつ、一族の財産を保全することが可能だ。

ただし、一旦、財団法人を設立して寄付したお金は、財団を解散しても取り戻すことはできず、国庫に帰属する。財団設立の際は気を付けたい。

Q 高額な美術品、誰が買ってるの?

今年5月、ZOZOTOWNの前澤友作社長がバスキアの作品を約62.4億円で落札して話題になった。前澤は長者番付の常連。彼の財団「現代芸術振興財団」で評議員などを務める、サザビーズの前社長・石坂泰章は「世界と日本では、フォーブスのビリオネアランキングと美術コレクターの相関性が違う」と言う。

「自宅に人を招く文化がある海外では、フォーブスに載る超富裕層は、ライフスタイルの一環として美術品をもちます。だから、オークション会社の顧客リストと長者番付が合致する。しかし、日本では美術と無縁の富裕層が多く、長者番付と顧客リストの相関性がありません。ただし、日本には超富裕層ではなくても、興味のある分野をマニアックに蒐集するタイプのトップコレクターが数多くいます」

世界的に見ても、日本は展覧会の入場者数が多く、観る文化は成熟しているという。ただし、見る文化と買う文化とが乖離していることが特徴なのだそうだ。
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編集 = Forbes JAPAN 編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.24 2016年7月号(2016/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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