2. 達成できない生産目標
人々が欲しがる製品をつくるというのは、素晴らしいことだ。だが、あなたが納期を守れなければ人々いずれ、あなたを実態の伴わない単なる“祭り会場の客引き”くらいにしか思わなくなるだろう。
テスラは先ごろ、今年第2四半期(4~6月期)の納車台数が前期に続き、目標を下回ったことを発表。さらに、通期の目標としていた8~9万台の生産も達成できない見通しであることを明らかにした。
3. 死亡事故に関する報告の遅れ
企業は出資を募る際、自社に投資をすることによって直面することになり得るリスクについて、投資家らに明確に示さなくてはならない。
投資家らに二の足を踏ませるような事実があり、CEOがそれを認識していながら隠し続けたまま、資金を獲得していたとしたらどうだろうか?さらに、取締役会がCEOのその行動を認識していながら、そのまま現職にとどめることを容認していたとしたら──?
ロイターによるとテスラは、一部に自動運転機能を持つ「オートパイロット」モードで走行していたドライバーが5月7日にフロリダ州で衝突事故を起こし、死亡した事実を把握していた。それにもかかわらず、5月18~19日に公募増資を実施するまで伏せていたというのだ。そして、テスラはこの公募増資によって、少なくとも14億6,000万ドル(約1,520億円)を調達した。
同社は7月5日になってようやく、事故については5月16日、米道路交通安全局(NHTSA)に報告していたことを公表。また、NHTSAは6月30日、この件について調査中であることを明らかにした。
ミシガン州にあるウェイン州立大学法学部のピーター・ヘニング教授は、テスラは公募増資の実施とソーラーシティーの買収計画を発表する前に、投資家らに事故発生を通知しておく必要があったと指摘している。
ある企業の製品を愛する人たちは、その会社の株にも愛情を持つようになる。だが、テスラの取締役たちは、マスクに対して愛情を持っているだろうか?企業統治に関するこれら3つの問題は、その点を疑わせる。いや、あるいは取締役たちは単に、一般株主たちの利益のために目配りをするという自らの役割を、十分に果たしていないだけかもしれない。