テスラに関するこれらの問題は、私たちに根本的な疑問を抱かせる。公開会社には、制御不能なCEOから株主を守る取締役会が必要なのではないだろうか──?
「天才起業家は、自身より劣る人間たち(取締役たちの中にもいるかもしれない)から制約を受けるべきではない」と考える人もいるかもしれない。だが、取締役会は理論上、成長戦略と経営手腕の獲得に向けた投資を承認することにより、リスクを減らし、利益獲得の機会を捉えて、株主のために行動する人たちだ。
テスラのイーロン・マスクCEOは確かに、世界でも屈指の素晴らしい起業家だ。オンライン決済のPayPal、テスラ、宇宙開発企業スペースXの創業者であり、いとこがCEOを務めるソーラーシティーの会長でもある。
しかし、それでもテスラは深刻な問題を抱えていると考えざるを得ない。その具体的な理由は、以下のとおりだ。
1. 28億6,000万ドル(約2,980億円)規模の「ソーラーシティー」買収
戦略的にみても、財務の面からみても、筋の通らない話だ。買収提案の内容は、利益の出ていない異業種の2社を統合させるもの。両社の業績や今後の展望の改善につながるような、有意義な協働を生むものではない。
テスラ車のオーナーの間には、太陽電池で走る車を望む声もあるかもしれない。それでも、そのためにテスラがソーラーシティーを買収する必要はないはずだ。
さらに、両社のキャッシュフローがいずれもマイナスであり、多額の負債を抱えていることを考えれば、買収価格は高額すぎるといえるだろう。