インスタントメッセージ(IM)においてエンドツーエンド暗号化をフェイスブックが取り入れたことは、同社がメッセージアプリの覇権を握ろうとする姿勢の表れだ。
今やメッセージアプリは、単なる会話のためのツールを超え、次世代のプラットフォームに成長しようとしている。そこでポジションを築けば、大きな影響力を与えられる。だからこそ、フェイスブックはメッセンジャーに力を入れているのだ。
同社はメッセンジャーを独立したアプリとし、新たなプラットフォームに仕立て上げようとしている。メッセンジャーはOSやデバイスを超え、全てをつなぐことができる。フェイスブックメッセンジャーの月間アクティブユーザー数は9億人を突破しており、他のIMクライアントより圧倒的に有利だ。
アップルもこれに対抗の構えだ。同社は前回の開発者会議(WWDC)でメッセージアプリの新機能の説明に多くの時間を割いた。ここで重要なのは3倍サイズの絵文字やフォントサイズの変更ができるようになったことや、モザイクを指で消してメッセージを読む機能ではない。テック界のエリートたちは、アップルがiMessageをプラットフォームとして位置づけ、力を入れていくことを示しているととらえた。
また、新たなソフトウェア開発キット(SDK)を使えば、ウーバーを呼び出したり、ステッカーを開発したり、アップルペイを通じて送金したりするなど、iMessageに機能を追加できる。
アップルはWWDCでメッセージアプリがiOS上で最も利用されているアプリだとした。具体的な数字は公表されておらず、iOS間でしかやり取りができないが、アクティブに利用されているiOSデバイスは10億台あり、フェイスブックをはじめとするサードパーティーのメッセージアプリに対抗できる規模がある。
「沈黙」を守るグーグル
気になるのはグーグルの動向だ。同社のハングアウトはほぼすべてのアンドロイド系端末に導入されている。しかしアンドロイド系端末におけるテキストメッセージと電話のデフォルトアプリになることは目指しているものの、プラットフォームに仕立て上げようとは考えていないのかもしれない。同社はメッセージアプリ「Allo」とビデオ電話アプリ「Duo」を発表したが、いずれもハングアウトにとって代わるものではない。
グーグルは近い将来、メッセージ戦争に本格参入するかもしれないが、それまでの間はフェイスブックとアップルの戦いになるだろう。ワッツアップやスナップチャットの動きも気になるが、フェイスブックとアップルという2大勢力の動向が、次世代のメッセージアプリの在り方を決定づけそうだ。