2015年の企業による音楽関連のスポンサーシップは前年比4.8%増の14億ドル(約1,406億円)。2011年と比べると20%の増加だ。
マーケティング調査会社IEGによると、企業らは大型フェスだけでなく、地元密着型のフェスにも注目し始めたという。現在、この分野で最大のスポンサー企業はバドワイザーで知られるアンハイザー・ブッシュ社。アルコール飲料のスポンサーシップの29%を同社のブランドが占めている。
同社は既存のフェスの協賛のみならず、2012年にジェイ・Zと組んで独自のフェスティバル、「メイド・イン・アメリカ・フェスティバル」を立ち上げた。9月のレイバー・デイの週末に行われる同フェスは、これまで毎年8万人を動員している。
独自フェスを立ち上げ「体験」を売る
そんなバドワイザーが2016年の夏、力を注いでいるのがカントリー音楽だ。昨年7万人を動員したStagecoachやCountry 500、CMA Music Festival、Faster Horsesといった大型カントリーフェスでは、バーン(納屋)を模した3階建ての「バドワイザー・カントリー・クラブ」を設営。建物の内外でビールの販売カウンターの他、醸造マイスターが質問に答えるコーナー、地元の職人やアーティストの作品販売コーナーを展開した。
ナッシュビルで開催されたCMAフェスでは、地元の印刷会社Hatch Show Printのブースや、革のボトルホルダーのブースに長い列ができていた。カントリー音楽ファンを対象にしたマーケティング戦略とその効果について、バドワイザーVPのリカルド・マルケスは次のように語る。
「バドワイザーは業界最大手のブランドです。今さらステージに大きなロゴを入れて認知度アップを図る必要はありません。それよりも人々に話題にしてもらうこと、体験を持ち帰ってSNSにアップしてもらうことを重視しています。『バドワイザー・カントリー・クラブ』はカントリー音楽やバドワイザーの精神を体現しているだけでなく、体験(experience)に浸る機会をフェス参加者に提供しているのです」