なぜ、嫌いな人は、自分に似ているのか[田坂広志の深き思索、静かな気づき]

HIROSHI TASAKA

嫌いな人は、実は、自分に似ている。

こう述べると、驚きを感じる人もいるだろう。

しかし、この言葉は、しばしば、真実である。

例えば、家庭などで、父親と娘が、よく意見がぶつかるという場合がある。

こうした状況を、よく見てみると、この父親と娘、遺伝的に互いの性格が似ているということが原因になっている場合も多い。

遺伝的には、娘が父親の性格に似て、息子が母親の性格に似るということは、しばしば起こると言われるが、この場合には、似た性格だからこそ、互いに父親と娘が、反発するということが起こっている。

また、例えば、企業などで、ときおり、こうした会話を耳にする。

会議で、二人の課長の意見がぶつかり、少し感情的な議論になった後、参加者の会話である。

「A課長、何で、B課長の意見にあんなに反対するのだろうか?少し感情的な反対のような気もするんだが……」

「A課長は、B課長のことが嫌いなんだろうな」

「どうして、そう思う?」

「だって、そうだろう。A課長とB課長、二人とも、性格が似ているんだよ……」

「なるほど……。やはり、そうか……」

では、なぜ、「自分に似ている人を、嫌いになる」、もしくは、「嫌いな人は、自分に似ている」ということが起こるのか?
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文=田坂広志

この記事は 「Forbes JAPAN No.24 2016年7月号(2016/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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