iPhone離れ加速の中国消費者 時代は「メイド・イン・チャイナ」へ

Peter Macdiarmid / gettyimages

世界のスマートフォン市場において、サムスンは長らくアップルの後塵を拝してきた。昨年はiPhone 6の人気に押され、サムスンのスマートフォン事業の売上高は前年割れとなった。しかし、ここにきてついに形勢が逆転しつつある。

サムスンが7月7日に発表した2Qの業績見通しによると、全社の営業利益が2年ぶりの高水準となる70億ドルに達し、アナリスト予測の68億ドルを上回ることが明らかになったのだ。

業績の詳細な内容は今月後半の正式発表まで明らかにならないが、「ギャラクシーS7」と「S7エッジ」などスマートフォンの実績が大きく貢献したことは間違いない。販売好調の要因の一つは、ギャラクシーS7とS7エッジの先行予約ユーザーにVRヘッドマウントディスプレイ「Gear VR」をプレゼントしたことだ。サムスンはこの好評ぶりを受け、両モデルの販売開始後にバンドルパッケージの販売を継続した。

Gear VRを無償配布は短期的には利益を圧迫するかもしれないが、IBBコンサルティングのシニアアナリスト、ジェファーソン・ワンは次の様に述べ、サムスンの取組みを高く評価する。「この極めて攻撃的なプロモーションにより、サムスンは長期的な売上拡大を図ると同時に、VRの領域で優位に立つことができるだろう」。IBBが最近実施した調査によると、VRのことを知らないアメリカ人はわずか12%に止まり、最先端テクノロジーとしての将来性の高さを物語っている。

アイカーンは全アップル株を売却

一方、アップルの2Q決算はiPhoneの販売台数が初めて減少し、特に中国で前年同期比26%減と販売不振が顕著になっている。また、調査会社IDCのレポートによると、2016年1-3月期の世界スマートフォン出荷台数でiPhoneはサムスンの「ギャラクシーシリーズ」に大きく水をあけられている。

中国でアップルを悩ませているのはiPhoneの売上減少に止まらない。「iTunesムービー」など複数のサービスが4月に中国政府によって使用禁止に追い込まれたのだ。この措置を受けてビリオネアの投資家カール・アイカーンは、「アップルの中国での事業展開が困難になる可能性が高い」との懸念を示し、保有するアップル株を全て売却した。

ワンによると、2年前まで中国人はiPhoneのことを「深圳で組み立てられた中国製品」と呼んで親しみを抱いていたが、最近はレノボやファーウェイ(華為)などの純国産ブランドを押す声が急激に高まっているという。「これはアップルにとって非常に大きな問題だ」と彼は話す。

「中国人消費者は“ファーウェイ製品は素晴らしい”と絶賛し、デザインから製造まで全て中国で行うメイド・イン・チャイナの製品に群がっている」とワンは言い、中国メーカーの実力が飛躍的に向上する中、消費者のスマートフォンを選ぶ目が大きく変化していると指摘する。
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編集=上田裕資

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