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電通総研内のクリエイティブシンクタンクによる連載「NEW CONCEPT採集」

illustration by Kenji Oguro

千葉の商人だった伊能忠敬が暦学・天文学に没頭するため、隠居したのは49歳。残りの半生で天体観測、地図測量において大きな実績を残した。約200年後の日本。人生のセカンドステージでの起業は新たな価値モデルになり得る?

「スタートアップ」「起業」「新規事業開発」といった言葉からどんな人物像をイメージするだろう。20代から30代前半くらいのエネルギッシュな若者、という方が多いのではないか。かく言う私はすでにその年代を過ぎているが、私より年配の方々にとってもスタートアップは無縁なものというわけではない。

福岡市に起業を志す人を支援する、その名も「スタートアップカフェ」がある。社会人、学生、主婦、誰でも無料でコンシェルジュに起業相談ができる。ここに足繁く通っているのが、82歳になる「松尾のおばあちゃん」。もともと物作りが趣味だった彼女は80歳を目前に下駄の鼻緒作りを始め、せっかくなので年配の人だけでなく若い人にも買ってほしい、と強く思うようになる。そんな頃新聞でこのカフェの存在を知り、ひとりで相談にやってきたのだ。彼女がつくる洒落た鼻緒はTSUTAYA BOOK STORE TENJINに置かれ、夏場に好調な売れ行きを見せた。スタートアップおばあちゃんは、店頭に並んだ自分の商品を見て、とても感動したという。

新しいことを始めたい気持ちに年齢制限はない。そのことを教えてくれる大スターといえば「伊能忠敬」だ(最新情報が満載の雑誌の中、ネタが古くて申し訳ない)。ご存じの方も多いと思うが、千葉の商人だった伊能は、江戸時代もっともホットだった暦学・天文学に没頭するため、49歳で隠居。50歳にして江戸に出て19歳年下の学者に弟子入り。最初は面倒がられたようだが、圧倒的な熱意でまわりを認めさせ、さらには莫大な財力で自宅を天文台に改造、天体観測で大きな功績を残す。その後55歳から72歳まで、17年間かけて全国を歩いて測量し、日本で初めて正確な地図を作り上げた。人生50年と言われた時代に50歳で新しいスタートを切った伊能忠敬だが、じつは当初彼がやりたかったことは地球の大きさを測ることで、地図の作成はついでだったとか。地球の大きさを知りたい!その一心で私財を投げ打ち(一説によると10億円以上)、日本中を歩きまわった(その距離4万km)。

商人として成功をおさめた人生第1ステージと、日本地図作成に奔走した第2ステージ。ただひとつのことに捧げる人生も美しいが、伊能忠敬のような「人生二毛作」もまた素敵だ。江戸時代と違い今は人生80年。高齢者の体力も年々上がっている。第2ステージをアグレッシブに活動する“イノウな人々”はさらに増えるだろう(ちなみに海外では意外にスタートアップのファウンダーは年長者が多いという調査結果があり、50歳以上が成功する確率は25歳以下の2倍だとか)。一例を挙げる。

文=中島英太

 

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