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秘密保持と税の優遇という都合の良い仕組みは、中世のローマ教皇領やイギリスの王族・貴族に起源があると言われる。特権階級だけが、不公平な仕組みを独占できたのだ。次第に貿易商など富裕層も特権階級の仲間入りをして、1950年代までは個人の富裕層が租税回避にタックスヘイブンを利用した。

1967年、ケイマン諸島で信託法が公布され、海外企業の呼び込みを始めるや、経済のグローバル化も重なり、70年代以降、ビジネスとして企業の利用が増えていく。

つまり、一部の権力者が使っていた仕組みが、「大衆化」したのだ。門戸が開かれたことで、会計や法律の専門家たちが新たなスキームをつくってはニーズを掘り起こしていく。こうしてタックスヘイブンを利用した取引が世界経済の中に組み込まれていった。

日本銀行の国際収支統計(2013年末)によると、日本からの対外投資先は1位がアメリカで、2位は西インド諸島にあるケイマン諸島である。タックスヘイブンのケイマン諸島は、11年に日本と租税協定を締結して租税回避防止の情報交換が行われているせいか、直接投資額は微減傾向にある。

例えば、相続税対策として資産を移転(譲渡)するSPC(=Special Purpose Company、特別目的会社)をつくった場合、SPCの新設や既存企業への出資は直接投資で、それは減っている。一方で、間接投資である証券投資は急伸している。直接投資が5兆948億円なのに対して、証券投資は55兆8,332億円。合計60兆9,280億円だ。後述する航空機リースなどの金融商品が証券投資に含まれる。

では、タックスヘイブンで何が行われているかを見てみよう。

復興マネーが航空機に

タックスヘイブンに行くと、企業名を書いた細長いプレートがオフィスの入り口にずらっと並ぶ。実際は登記だけのペーパーカンパニーで、その多くがSPCだ。日本をはじめ世界の富裕層、金融機関、事業会社などが資産の流動化や証券化を目的に設立した会社である。

例えば事業会社は、保有する資産(金融資産や不動産)をSPCに譲渡することで資産を会社本体から切り離す。その上でSPCは譲渡された資産を担保に株式を発行したりして資金を調達する。これにより会社の資産を圧縮して財務指標を改善したり、資金の調達コストを抑えたりできる。

このSPCを使ったビジネスのひとつ、航空機リースを紹介したい。現在、世界の空を飛んでいる航空機の数は約2万3,000機。そのうち約8,000機がリース商品である。リースの航空機の共同所有者として、実は日本人が増えている。

「東日本大震災の復興が影響しており、今後の航空機産業は震災の復興にかかっているといっても過言ではない」と、リース会社の関係者は公言する。

「飛行機の共同所有に出資しているのは、超低金利で運用先が見つからない地方銀行や、震災の復興特需で利益が増えた建設業者です。なかには震災で需要が急増した棺桶業者の名前もあります」

文=藤吉雅春、船木春仁

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