その中で私の目を引いたのは、次の文章だ。「意欲的なバーが増えるなか、バーテンダーの仕事は専門職化しており、より多くの人がバーテンダーを“本物のキャリア”として追求しつつある。つまり5年や10年だけではなく、いかにしてその仕事を長く続けるかが重要になっている」
バーという場所についての概念が年月と共に進化を遂げるのと同様に、バーテンダーの役割もまた進化してきた。そして消費者文化の中で料理人が“裏”から“表”に出てきたのと同様に、バーテンダーもまた、バーカウンターの向こう側からテレビや出版の世界へと進出した。
だが飲酒文化において、アルコールとファストカジュアル(ファストフードとファミリーレストランの中間の新業態)は急速に混ざり合いつつある。たとえばコーヒーチェーン大手のスターバックスは、一部の店舗でビールとワインの提供を試験的に始めた。これは書店チェーンのインディゴ/チャプターズが、書店内にスターバックスを併設して以来の大変革だ。
レストランを訪れる客はますますセルフサービスに慣れてきており、自分でビールを注ぐようになるまでもあと一歩だと言える。カナダやアメリカ各地のバーには、数年前から客が自分でビールを注ぐことのできる、ビールサーバー付きテーブルが出現しているが、今では壁に備えつけのサーバーの方が増えてきている。
ポア・マイ・ビール(Pour My Beer)などの店では、客とスタッフの交流は最小限、支払いはID情報が搭載されたICカード(RFID card)で行うセルフサービス形式をとっている。