ビジネス

2016.07.08 08:30

慈善事業の形までも変える、IT起業家たちの自負と焦り


イーベイやフェイスブックが生まれたテクノロジー業界は競争が激しく、効率が重視される。また、インターネットやスマートフォンの普及により、プロダクトやサービスは世界的に使われている。こうした合理性と楽観主義、そして壮大なビジョンを併せ持つシリコンバレー発の起業家たちは、慈善事業の形まで変えようとしているのだ。

なかでも、ソーシャル・ネットワークの発達は大きい。フェイスブックやツイッターといったサービスは、世界中の人をリアルタイムでつなぎ、世界の隅々から情報を汲み上げている。貧困や差別、環境問題などが写真や動画を通じて伝わることで、単に寄付をするだけでは対応しきれない、と一部のIT起業家たちは考えるようになった。

それに、彼らはビジネスで雇用や起業家のエコシステム(生態系)をつくる重要性も理解している。前出のオミダイアは、イーベイが自営業者を数多く生み出した経験を引き合いに「市場原理が社会を変革する大きな力になる」と語っている。

その一方で、焦りもある。ザッカーバーグも愛娘への手紙の中でそれを隠そうとはしない。

「僕はこれから何年もフェイスブックのCEOを続けることになる。でも、こうした問題は君や僕らが年をとってから取り掛かるのでは遅すぎるんだ」

妻のチャンも米専門誌「クロニクル・オブ・フィランソロピー」の取材に、「教育改革や疾病対策、堅固で平等な共同体づくりといった難題は、25年から50年、場合によっては100年以上の時間をかけて取り組まなくてはいけません」と答えている。

自分たちのサービスが短期間で世界を変えたという自負。そこから見えてきた、解決に時間を要する社会問題への焦り。こうした時間感覚が、新世代の慈善事業家たちを突き動かしている。

フォーブス ジャパン編集部 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.24 2016年7月号(2016/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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