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2016.07.08 17:00

本物の中国人富裕層をうならす、日本人も知らない「日本の旅」

江戸中期につくり酒屋として財をなした旧杉山家住宅。町割りの一角を占める屋敷内には、主屋や酒蔵、土蔵などが連なる。

おそらく中国の超富裕層の生態を最も知るのが、今回登場する水谷浩ではないだろうか。商社マンを経て、彼が富豪たちに提案するのは日本人も知らない「日本の旅」である。

中国人観光客というと、すぐに「爆買い」のイメージと結び付けられるが、本物の中国人富豪たちの来日目的は少し異なるという。

「そもそも富裕層はドラッグストアで爆買いなんてしませんよ」

こう語るのは、中国の超VIPたちから直接指名を受ける通訳ガイドの水谷浩。彼の顧客リストには日本人でもメディアを通じてよく知る中国企業の大物幹部たちがズラリと並ぶ。

彼がアテンドする中国の上級富裕層の人たちは、どんな目的を持って日本にやって来るのだろう。ビジネス半分、観光半分の「視察」もあれば、プライベートな家族旅行もある。世代によってその目的は異なるし、いわゆる「爆買い」でもドラッグストアで化粧品や医薬品を大量に買うのとは大きく違う。

例えば、中国の巨大グループ総帥夫人は、京都で明の時代の銀の香炉(650万円)をカードで一括払いした。前回の来日時に日本全国の骨董店を訪ね歩き、目星をつけていたらしい。そして、「朋友(友達)」と称するプロの鑑定家をわざわざそのために同行させて、真贋を確認したうえで購入したという。

中国には若くして成功し40代で巨万の富を築いたIT企業家も少なくないが、いつもはビジネスや投資の話に目ざとい彼らの異なる一面を見たこともある。グループ幹部を招集した京都での会議で、息抜きに鴨川沿いをサイクリングしながら観光案内した際、普段は見せない気さくな素顔を見せたという。

中国ではありえない「歴史の連続性」

さて、その水谷が、中国のハイクラスな富裕層を相手に「この町を案内してハズしたことはない」と断言するのが大阪の富田林だ。PL教団の大本庁や、同教団が主催する夏の花火で知られる富田林だが、実は大阪で唯一の、国が指定する重要伝統的建造物群保存地区がここにはある。

寺内(じない)町と呼ばれるこの地区は、400年以上前に織田信長と戦っていた「宗教自治都市」で、高台の上に要塞としてつくられ、古くは江戸時代から明治、大正、昭和前期までに建てられた寺院や民家が並び、いまもそこで人々が暮らしている。
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文=中村正人 写真=佐々木 康

この記事は 「Forbes JAPAN No.24 2016年7月号(2016/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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