半導体ブロードコム、IoT事業を560億円で売却 サイプレスが引き受け

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IoT分野でまたもや大型買収が発表された。半導体大手ブロードコム(Broadcom)は、同社のIoT事業をサイプレスセミコンダクタ(Cypress Semiconductor)に売却する。今回の買収は4月にアナウンスされ、7月5日に正式合意に至った。買収金額は5億5,000万ドル(約556億円)とされる。

元ブロードコム社員でこの案件を担当した、スティーブン・ディフランコ(Stephen DiFranco)はサイプレス社に移籍し、IoTビジネス部門の責任者に就任する。サイプレスはブロードコムのWiFiやブルートゥース、Zigbee製品も合わせて吸収し、この分野の取り組みを加速させていく。

ブロードコム時代の取り組みをディフランコは「優れたブルートゥースやWiFi製品で顧客を獲得していたが、トップレベルの大手企業が対象のブロードコムのビジネスの中では小規模なユニットだった」と述べている。IoTビジネス推進のためには、サイプレス社への売却がふさわしいと判断したという。

IoT関連ビジネスは現在、混沌とした環境にあるのが現実だ。大手企業が市場をリードするのではなく、小規模なスタートアップがせめぎあい、様々な分野で実験を試みている。ネットに接続されたサーモメーターやドアチャイム、遠隔操作が可能な電球など、様々な製品が生まれているが、明確な成功を収めた企業はまだ存在しない。

ブロードコムは今年初め、同じく半導体大手のアバゴ・テクノロジーに370億ドル(約4兆6,000億円)で買収された。それ以降、幹部らはIoT事業の売却に向け動いてきたという。

「現状のブロードコムのビジネスモデルでは、IoTの普及に必要な市場にアクセスすることは難しい」とディフランコは述べている。

「IoT分野では様々な顧客や製品のニーズを考えつつ、繰り返し実験を行なう必要がある。この取り組みはブロードコムでは実現不可能なものだった」

ブロードコムはIoT事業の売却以降も、スマートフォン向けのブルートゥースやWiFiビジネスは継続する。同社の通信チップはアップルでも採用されている。

ブロードコムでIoT事業に関わった400名の従業員はサイプレスに移籍する。売却が決まった当時、IoT部門は前年比17%で成長していたとディフランコは述べている。

編集=上田裕資

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