言語はもちろんだが、文化、規制、インフラなど、国ごとに異なる要素は多い。Visaのようなグローバル企業では、社内に世界各国での成功事例が蓄積されている。しかし、ある国のベストプラクティスが、どの市場にも合致するわけではない。市場環境を観察し、オープンに受け止めた上で、個々に合わせて適応させる必要がある。
「サービスに”フリーサイズ”はない」とディクソン社長は強調する。
「グローバルリーダーに求められるのは、まず自分が適応することです。その環境では自分が外国人ですから、従業員やお客様を理解し、協力し合える関係を構築することが必須です」
これまでに赴任した中には、その国の言葉が話せない国が2つ以上あった。そんな制約の中で、同僚やクライアント、取引先との信頼関係を築くためには、目の前にある実態を見ることだけでなく、歴史的な背景を理解することが大事だという。
「歴史を理解すると、その文化に対する尊敬の念が生まれます。なぜ、その国が今のような形で存在しているのかを知ることは、グローバルビジネス、グローバルリーダーにとって非常に重要なことなのです」
外国人として働き続ける中で、ディクソン社長のロールモデルとなったのは父の背中だ。「あれこれ指図をせず、正しいとか間違っているとかも言わない。父は、私が自分で考えて、自力で解決策を出せるように導いてくれました」
どこに行っても課題があり、それを一つひとつ解決してきた。アジア諸国で鍛えた筋力を、オリンピックを待つ日本で活かす。
ジェームス・ディクソン◎1960年7月4日生まれ。82年、ミシガン大学を卒業。90年、サンフランシスコ大学でMBAを取得。バンク・オブ・カリフォルニアを経て、92年、Visaに入社。アジア各地で要職を歴任後、2015年9月より現職。55歳。