安本:密なコミュニケーションを通して一人一人に方向性を示す、カウンセラーのようなものですね。より良い方向に進めるように仕向けていくのが、私の仕事です。
谷本:今年4月に出版された『新入社員から社長までビジネスにいちばん使える会計の本』にも、スタートアップの経営者に向けたアドバイスや会計のポイントなどを書かれていますね。
安本:この本で私が強調したかったのは、会社経営において、決算書を読み解くことがいかに重要かということです。決算書から何を読み取るべきかがわかっていない人が、あまりにも多すぎます。しかし、それではもったいない。決算書には、会社の全てが表れているのです。
たとえば決算書からは、その会社が5年後にはどうなっているか、あるいは、どこをどう改善すれば成長していくのか、ということが分析できます。では、決算書のどの部分を、どのように分析すればいいのか。それを、この本の中で解説しました。巻末に簿記のイロハを載せましたので、簿記のわからない人、経営の初心者でも安心して読んでもらえます。
谷本:それでは最後に、スタートアップの経営者に向けて一言お願いします。
安本:経営は、夢だけでは続きません。自分がやろうとしていることは、本当に世の中がお金を出してまで必要とするサービスや商品であるのかどうか、見つめ直してください。私はよく、「ユーザーのことを考えなさい」と言っているのですが、考え足りない人がたくさんいます。
そして、自分のやろうとしている経営が、本当に儲かる構造なのかどうかも、しっかりと考えて分析してください。そのためには、会計の本を読むことや、先人の言葉を聞くことが有効です。人の意見に素直に耳を傾けることも、経営者には欠かせない要素の一つです。
安本隆晴◎公認会計士・税理士。株式上場準備コンサルタント。1954年静岡県生。1976年早稲田大学卒業。朝日監査法人(現・あずさ監査法人)などを経て、安本公認会計士事務所を設立。1990年にファーストリテイリングの柳井正と出会い、以降、監査役として同社の成長を支えてきた。著書に『ユニクロ監査役が書いた強い会社をつくる会計の教科書』(ダイヤモンド社)、『数字で考えるとひとの10倍仕事が見えてくる』(講談社)などがある。