配車アプリ乱立時代の終焉 「リフト身売り」でウーバーVS滴滴の2強対立へ

Photo by Mike Coppola/Getty Images for Lyft

配車アプリのリフト(Lyft)に身売り説が急浮上している。リフトは投資銀行のカタリストパートナーズ(Qatalyst Partners)と提携し、売却先候補の選定に入ったと伝えられる。この噂が事実であれば、ウーバーとの間で繰り広げてきた資金調達戦争はついに最終局面を迎えたことになる。専門家の多くは、リフトがウーバーに屈するのは時間の問題だと見ていた。

(注記:筆者は2015年にウーバーに勤務していたが、本稿には当時得た内部情報や、現在の社員から得た情報に基づく記述は一切ない)

驚くべきは、リフトが独立経営やIPOを諦めるかもしれないということだ。同社は今年1月に10億ドル(1,016億円)を調達し、5月にはフォーブスの取材に15億ドルのキャッシュを持っていると明かしていた。リフトは月の赤字を5,000万ドル以内に押さえるとしており、2年以上は事業継続をする体力があると見られていた。

それにも関わらず、リフトが身売りもしくは新たな資金調達を検討していることは、同社が直面する課題を示している。この問題は、資金力の有無に関わらず、世界中の配車アプリに共通するものと言える。ブレグジット(英国のEU離脱)や世界経済の減速により年初から株式市場のパフォーマンスは冴えない。

リフトは売上高さえ成長していれば、赤字が続いても市場から評価を得られると期待していた可能性があるが、現実は厳しいことを思い知らされたようだ。

ウーバーも黒字化には程遠い

ウーバーのトラビス・カラニックCEOは、同社が世界の数百都市で黒字化を達成したとしているが、詳細は不明だ。全社ではまだ赤字で、特に競争の激しい中国市場では巨額の損失を計上していると見られている。リフトよりも1日当たりの配車件数が1桁近く大きいウーバーですら赤字であるということは、リフトが黒字化するにはまだ数年を要する可能性が高い。

自社の強みを忘れたリフト

リフトのサービスを際立たせているのは運転手の質の高さと、友達感覚で乗れるフレンドリーな乗車体験だ。しかし、同社はウーバーとの競争が激しくなるにつれ、これらの点をあまり重視しなくなり、ウーバーのように配車アプリの機能ばかりを宣伝するようになってしまった。

10年後にロボット車両やMaaS(mobility as a service)型のビジネスモデルが普及し、ドライバーが不要になる時代がやってくると、配車サービスの差別化要因は価格と機能に絞られるだろう。そうなると、これまでドライバーの質と乗車体験をセールスポイントにしてきたリフトは、一層厳しい状況に陥る可能性が高い。
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編集=上田裕資

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