谷本:UPQのコンセプトは、日本だけでなく世界各国の消費者に響くと思いますか?
中澤:思います。昔から日本だけでなく、アメリカや中国や香港の新製品の並ぶ展示会にも行っていますが、どこに行っても同じようなものばかりが出展されていて、あまり目新しいプロダクトは出てきていません。CES(Consumer Electronics Show)に行っても、同じような製品ばかりで盛り上がっておらず、出展側も面白くなさそうなんです。
アイデアが飽和したというより、ものの出し方がパターン化してしまっているのではと感じています。
いま、日本のメーカーさんとバングラディシュにある工場で製品を作っているのですが、バングラディシュは、自動運転車はおろかガソリン車すら少なくて、人力車が走っているような地域もあります。でも、バイクに乗ったことがない現地の人でも、UPQのバイクを見て面白いと言ってくれるんです。
ものやアイデアが飽和していると考えるのは間違いで、国や育った環境、貧富の差は関係なく、面白いものは面白いと思ってもらえるんだと気づくことができたのは大きな収穫でした。
カシオでは「良いものは勝手に売れる」と教わりました。売れないものを売るのが営業の仕事ではなく、売れるものを「もっと売る」ために知恵を絞るのが営業の仕事。黙っていても売れるものを作るのが開発の仕事。だから基本的に営業は必要ないけれど、作った側の思いを語り、もっと多くの人に製品を手にしてもらうために営業がいるんだよ、と。
UPQを立ち上げて、この教えをよく思い出します。製品のインパクトや魅力があれば過度な営業組織は不要になると思うので、世の中にもっと広めることや開発スピードを上げることにリソースを割いて知恵を絞りたいんです。昔のメーカーは、そういうものづくりを楽しんでいたのではないでしょうか。
谷本:最後に1つだけ聞かせてください。UPQはこれからさらに発展していくと思いますが、今後何を目指していらっしゃいますか?
中澤:みんなに「すごいね」って言われたいわけでも、売上を大きく拡大していきたいわけでもありません。じゃあ何のために仕事をしているのかというと、やはり「ものづくりの楽しさ」を知ってしまったので、それをずっと続けていきたいし、下の世代に伝えたいですね。
私が明日死んでしまっても続けて欲しいので、何よりブランディングに注力しています。私以外のメンバーも「UPQらしさ」を判断できて、それがお客さまにもきちんと伝わるような強固なブランドを作っていきたいと考えています。
谷本:素敵ですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。