いまに合った「ものづくり」で、時代を動かす起業家 UPQ中澤優子

UPQ代表取締役 中澤優子氏

「UPQ(アップ・キュー)」といえば、2015年7月の設立後、わずか2か月でスマホなどの製品を発売し、鮮烈なデビューで家電業界に衝撃を与えた気鋭のスタートアップ。当時30歳の女性が単身で立ち上げたということでも話題を集めた。

手がける製品は、スマホにカメラ、イヤホン、ディスプレイ、デイパックなどと幅広く、「ブルー・バイ・グリーン」、「ネイビー・アンド・レッド」など、流行を取り入れたコンセプトカラーで統一されているのが特徴だ。今夏には、折りたたみ機能を備えた電動バイクの発売も予定されている。

設立からようやく1年。このタイミングでUPQ代表取締役 中澤優子氏に話を聞いた。(後編は7月9日公開)


谷本有香(以下、谷本):UPQ設立から1年経ちますが、振り返ってみていかがですか?

中澤優子(以下、中澤): 私たちが作っているのは、昨今世界で注目されるIoTの製品ではなく、いわゆる昔からあるカテゴリーの「家電製品」です。複数種にわたる一般家電を製造し、販売するベンチャーは、これまであまりなかったこともあって、この1年注目いただいていると考えています。また売り場が広がり、製品が売れていくことで、元気がないと言われ続けて久しい家電業界のものづくりや販売の動きも少しずつ変わってきていると感じています。

谷本:具体的にはどのように変わってきたと感じていらっしゃいますか?

中澤: 私がハードウェアのものづくりに夢中になったのは、新卒で入社したカシオでお世話になった「ケータイおじさん」たちのおかげです。私が入社した頃、既に「ものづくりは面白くない時代」と言われていました。彼らが知っているものづくりの魅力を教えてもらう一方で、「時代が悪かったね」と言われ続けたことは結構悔しかったです。

私たちの時代に合ったものづくりの魅力を体感できる方法はないか考え、行動し続ける中で、UPQという家電ベンチャーの起業に至りました。

これまでは、在庫や部材のリスクをはじめとするハードウェアならではの物理的な困難を理由に、ハードウェアの起業は難しいと言われていましたが、IoT系のベンチャーの台頭やUPQを立ち上げたことによって、それが可能な時代になったことを広く知ってもらえるようになったのではないかな、と思います。

谷本:活き活きと働いている技術者の方たちをご覧になってきて、技術はいまだに日本の強みの1つだと思いますか?

中澤:カシオでは、技術こそが日本の強みだからという自負よりは、ものづくりそのものが好きで、楽しんでいる技術者に囲まれていました。また、製造業というビジ ネスではありますが、単に利益だけを求めて作っているわけではなく、ものづくりが好きで「こういうものがあるといいよね」というものを作って、世に出して みたら「すごい」「欲しい」と言ってくれる人がいて――そういう循環が、ギスギスしていなくてエネルギッシュで面白いなと感じていました。
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構成=筒井智子 写真=寺内 暁

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