カリフォルニア州サンフランシスコの連邦地裁に6月28日に提出された和解案によると、VWは米国で過去最大規模となる自動車関連の集団訴訟で、不正車両の買い戻しや所有者への補償にあてる和解金として約147億ドル(約1兆5,000億円)を支払う。同地裁は来月29日にも、和解案に対する最終的な判断を示す予定だ。VWにとっての最終的なコストは、さらに増える可能性もある。
VWは不正があった排気量2リットルのディーゼル車およそ47万5,000台の修理・買い取り費用として、約100億ドルを用意する。また、VW車の所有者に支払われる補償金は、車両の製造時期に応じて5,100~1万ドル1万ドル(約52万~102万円)。不正問題の発覚後に所有していたVW車を売却した人も、一部補償の対象となる。
所有者への補償に加え、VWは大気浄化法に違反したとして、同州政府に対し27億ドルの制裁金を支払う。また、排出ガスゼロの車両(ゼロ・エミッション・ビークル、ZEV)に関する研究やプロジェクトに充てる費用として、20億ドルを拠出する。
自動車価格情報を提供するケリー・ブルー・ブック(KBB)の上級アナリスト、レベッカ・リンドランドはVWへの制裁について、「不正問題による死者が報告されていないことを考えれば、制裁の規模は非常に大きいといえる」「(問題が)長期化しており、VWにとっては早期の解決が望ましい。VWは同社ブランドとその評価に新たな活力を与えるような、製品主導の再生に集中する必要がある」と指摘している。
和解案は懲罰的な内容だが、VWにとっての痛みはこれだけでは済まない。米司法省は大気浄化法への違反で同社を提訴しており、さらなる制裁金が科される可能性がある。ドイツや韓国などでも調査が行われており、VWが一連の問題への対応に向けて用意した費用は、総額180億ドルに上っている。