マネー

2016.06.29 15:00

天才数学者たちが率いる謎のヘッジファンド、「ツー・シグマ」の正体


ライカーズ島の刑務所を出て4カ月後の15年2月、ガオはコンピュータ関連データの違法コピーについてのみ有罪を認めた。科された刑期はすでに拘留された期間をもって満たしていたので、中国に戻った。ガオを罰しようとするオーバーデックとシーゲルの模索はなお続いている。現在、30万ドル以上の損害賠償を求めて、ガオに対する仲裁裁判を起こしている。

担当判事のジェフリー・オウイングは14年の審理で「これはやり過ぎではないかね? たかが義務の不履行で誰かを投獄するとは」とツー・シグマへの反感を公然と表し、こう述べた。「彼にいらだち、激怒しただけで、ここまでする理由になるのかね?」

オーバーデックとシーゲルは金融危機後の米国で、最も偉大ともいえるヘッジファンドの成功物語を紡いできた。彼らは数学を武器に戦い抜いてきた。その成功の公式や方程式を守るためならどんなことだってする。

それでもツー・シグマにはMITやカーネギーメロン大学、カリフォルニア工科大学などでコンピュータ科学や数学、工学を修めた者たちが集まる。ツー・シグマはゴールドマン・サックスやジョージ・ソロスと張り合うのではなく、高給を用意し、グーグルやフェイスブックといったシリコンバレーの企業と人材を奪い合っているのである。

ツー・シグマ(TWO SIGMA)◎ニューヨークのウォール街ではなくダウンタウンのソーホーに本拠地を構える。「D・E・ショー」出身のジョン・オーバーデックと「チューダー・インベストメンツ」CIO(最高情報責任者)だったデビッド・シーゲルが2001年に創業した。

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構成=山下祐司 翻訳=町田敦夫

この記事は 「Forbes JAPAN No.25 2016年8月号(2016/06/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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