マネー

2016.06.29

フィンテックバブル、崩壊の懸念 「顧客の9割が高リスク層」の現実

GSO Images / gettyimages


高騰する顧客獲得コスト

現状1,300社ほどあるオンライン融資会社がターゲットとする顧客層は、市場全体の1%を占めるに過ぎない。一方で、伝統的な銀行の数は6,500社ほどあり、彼らは残りの99%を占める顧客層を相手に融資を行っている。オンライン融資会社が対象とするのは、これまで銀行が相手にしてこなかった最下層の顧客であり、銀行はオンライン融資会社の台頭を全く脅威に感じていないのが実情だ。このように、デフォルトリスクの高い層が主要顧客であることが、オンライン融資業界が直面している問題の核心だと言える。

一方でオンライン融資会社は新規顧客の獲得のために1件当たり2,500ドルから4,000ドルものコストを費やしている。筆者がCEOを務めるBodeTreeではオンライン融資会社に借り手を紹介しているが、従来は融資額の1%だった紹介手数料が、最近では3%から5%へ跳ね上がった。それだけサブプライム層(優良客よりも下位の層)の獲得競争が激化している証拠であり、中には10%の手数料を支払う企業も出てきている。これは非常に憂慮すべき問題だ。

業界が目指すべき方向性

オンライン融資会社が今後取るべき行動は、成長速度を緩めて戦略を見直すことだ。リアルタイムのデータを活用して顧客をモニタリングし、借り手が責任をもって融資を受ける仕組みを構築することが重要だ。精緻なデータ分析によってリスクを低減できれば金利を引き下げることができ、伝統的な銀行と協業する道も開ける。

どのオンライン融資会社も銀行と協業し、銀行が行いたくない融資を代わりに実行したいと考えている。銀行側は金利が15%を超える業者との提携を拒む傾向があるため、オンライン融資会社が金利を引き下げることができれば銀行が門戸を開く可能性がある。そうなれば、現状のように下位1%の顧客を巡って不毛な争いをする必要はなくなるだろう。

しかし、残念ながら筆者が描くシナリオはすぐには実現しないと思われる。多くの企業は目先の成長を優先するため、当面は借り手のデフォルト率が上昇し、顧客獲得コストもさらに増加し、業界全体のリスクが高まるだろう。バブルの崩壊を防ぐ上で、これから業界全体が正しい方向に進むことができるかが大きな課題だ。

編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事