ビジネス

2016.06.30 08:00

パナソニックが挑む「出向による人材育成」


以上に見てきたように、ベンチャー企業への出向を通じて「0→1の実践経験」「全体感」「専門性」を人材に提供することで、イノベーションを起こすために必要な能力を開発することができる。

そして、出向制度の最大の特徴は、当然ながら人材が戻ってくるということにある。かつて、日本企業は終身雇用という形で企業と個人が長期的な信頼関係を結び、その安定の下で人材が専門性を高めることでイノベーションを起こしてきた。イノベーションに必要な能力の要件が変わった今、人材の流動性にばかり議論が向いているが、果たしてそれで十分なのだろうか。

大手企業の持つ資源にアクセスし最大限に活用するためには、信頼関係の構築が必要なことは、今も変わらない。つまり、大手企業はイノベーションの旗手となるべき人材との長期的な信頼関係を維持しつつ、一方で自社内では提供することが難しい事業創造の能力開発の機会を提供しなければならない。そして、この相反するこの2つを両立する人材の育成手法として、出向制度が注目されているのだ。

原田未来◎ラクーン、カカクコムを経て、15年7月ローンディール設立。業界や規模を超えた出向を可能にするプラットフォーム「LoanDEAL」を運営している。

文=原田未来

この記事は 「Forbes JAPAN No.23 2016年6月号(2016/04/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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