ロンドンのテック起業家の90%が望まない決定が下された。起業家の多くはEU圏外からの移民だ。スタートアップ企業の多くが戦略の見直しを迫られる。英国はこれまでのように優秀な移民の労働力を得られる国ではなくなるのだ。
90%の起業家が望まない結果に
「本当に憂鬱な日がやってきた」。ロンドンに本拠を置くソフトウェア企業Improbable創業者、ハーマン・ナルーラ(Herman Narula)はそう述べた。同社は先日アンドリーセン・ホロウィッツから2000万ドルを調達したばかりだった。売上の半分をポンド建てで得る同社を、まずポンドの急落が直撃する。さらに、精神的な打撃も大きい。
ナルーラはインドのデリー生まれ。2歳でロンドンに移住し、英国国籍も得ている。しかし、今回の決定はボディブローのように彼の精神にも影響を与えるという。「イギリスはこれまで世界に開かれた偉大な国だった。しかし、今回の決定は全く反対の方向に国を導くものだ。これは、自分のアイデンティティーにも関わる話だ」
Eコマース企業、Made.com本社も重苦しい空気に包まれた。「自分たちが否定されたと感じている。オープンであることを拒絶する結果になった」と語るのは、ロンドンのスタートアップシーンを代表する投資家、ブレント・ホバーマン(Brent Hoberman)。
旅行サイトのラスト・ミニッツ(Lastminute.com)を1998年に立ち上げた彼は2007年にオンライン家具販売のMade.comを共同創業。その後、エンジェル投資家を束ねるファウンダーズ・ファクトリー(Founders Factory)の運営を通じ、ロンドンの起業家らを支援してきた。
離脱派の勢いを甘く見ていた
ホバーマンもまた南アフリカのケープタウンで生まれた移民だ。「みんな離脱派の勢いを甘く見過ぎていた。オープン化と反対の方向に向かう人々の心理を理解していなかった」
Made.comの利用者の半数はヨーロッパ諸国に散らばる。全社員200名のうち35%がロンドンに勤務するが、その多くがEU圏からの移民だ。それらの社員の処遇は今後の英国政府とEUとの交渉の結果に委ねられている。