「イギリス政府は明日にも、移民労働者には特別なビザが必要だと言い出しかねない。そうなれば、高スキルな人材の獲得には大きな障害が生まれる」とホバーマンは言う。
「英国内だけで優秀な人材を獲得するのは非常に難しい。人材不足の穴を埋めていたのが、ヨーロッパ圏からの移民だった」
イギリスの財務大臣、ジョージ・オズボーンはかつて「英国はビジネスに開かれた国だ」と宣言した。しかし、今回のEU離脱は全く正反対のメッセージを発することになる。
もはや英国企業では居られない
今後の英国政府の運営はキャメロン首相の後任の手に委ねられるが、先行きは不透明だ。EUを離脱後も、EFTA(欧州自由貿易連合)加盟国として、EUの単一市場(圏内での人や物、サービスの流れの自由が保証される)に留まる道もあるかもしれない。ノルウェーやスイス、アイスランドらはEU非加盟国でありながら、この座組みで単一市場に加わっている。
しかし、雲行きは怪しい。ドイツ財務相のヴォルフガング・ショイブレはそのような妥協策はとれないと明言した。シュピーゲル誌のインタビューで彼は「イギリスは残留なら残留、離脱なら離脱だ」と言い放った。
今後、英国政府がハイスキルな移民を対象とした技術ビザの発給も行なうことも考えられる。しかし、人材の獲得コストが上昇することはもはや避けられない。
この動きを見据え、企業の間ではベルリンや東ヨーロッパの都市に新たな拠点を設ける動きも進んでいる。ロンドンで企業向けデータサービスを提供するDueDilは、「今後数週間で戦略転換の方向を討議し、新オフィスのオープンに動く」という。
DueDilの創業者ダミアン・キメルマン(Damian Kimmelman)は、「新オフィスの開設は避けられない。英国内からしか採用が出来なくなれば会社は潰れる」と述べる。他拠点化はオペレーショオンコストの増大につながる。しかし、生き残る道はそれしかないと彼は言う。
「今後はインターナショナルな企業として前進を続けるしかない。我々はもはや英国企業では居られないのだ」