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2016.06.26

アリババ会長、模造品との戦いを宣言 「文化」は変えられるか

アリババのジャック・マー会長(Photo by JP Yim/Getty Images)

中国のインターネット通販大手アリババ(阿里巴巴)のジャック・マー会長は6月22日、ウォールストリート・ジャーナル紙への寄稿の中で、自社サイトに出品する販売業者に対し、次のように明言した。

「偽造品は絶対に受け入れられない。ブランドやその保有する知的財産は保護されなくてはならない。自らブランドを開発し、それに投資したメーカーを支持することだけが、アリババの関心事だ。他者の知的財産から搾取する者は一切容認しない」。

どうやらマー会長は、中国を変えようとしているようだ。ブランド名を掲げたあからさまな模造品を容認しない、新たな体制を築こうとしているらしい。

だが、その実現にはそれなりのコストがかかる。アリババの営業利益を圧迫することにもなるだろう。その上、そうした方針を徹底させるのは以下の4つの理由から、簡単ではないと考えられる。

1. 中国人の気質──「手っ取り早く稼いでやろう」

共産主義の失敗が明らかになるなかで数十年を過ごした中国の人々は、生活環境を改善し、満足のいく状態を手に入れることに必死だ。国民の中には、現代の資本主義の本質は「一定の社会的価値観と制約の中における富の創造のシステム」であり、そこには他者の財産の尊重、という概念が含まれていることを理解していない人たちがいる。

2. 知的財産は「社会の利益」

共産主義の規則においては、多くの物が社会の、または共同の所有物であり、社会の一員であれば誰もがそれを共有できる。この考えに基づき、ブランドの名称を含めた知的財産も無料で共有できるものだと考える人たちがいる。

3. 財産権の保護に関する法律の不備

中国ではほとんど、知的財産権が保護されていない。スターバックスやコカ・コーラは著作権侵害に関する裁判で勝訴したが、違反者を罰する法律の整備は大幅に遅れている。
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編集=木内涼子

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