「僕がバスキアの絵を62.4億円で買った理由」ZOZOTOWN前澤友作

スタートトゥデイ代表取締役 前澤友作氏とAKI ISHIZAKA代表取締役社長 石坂泰章氏。アートは左から、「dollar sign (1981) ANDY WARHOL」「JULY 4, 1980 (1980) ON KAWARA」「Untitled (1999) MARK GROTJA」(photographs by Takashi Yoshida)


自分で探して買う面白さ

ー前澤さんが現代アートのコレクションを始められたのはいつ頃からですか?

前澤:10年前ぐらいです。最初はいわゆるポップアート。ロバート・インディアナやウォーホルなどのシルクスクリーンやプリントを何枚か買ううちに、絵画や彫刻も徐々に……という感じです。

石坂:私が前澤さんにお会いしたのは8年前でしょうか。確か前澤さんがリキテンスタインの作品を買われた時ですね。その頃、私はサザビーズジャパンにおり、作品を探すお手伝いをさせていただきましたが、「この人はアートが心底好きなんだな」というのがよく伝わってきました。

ーアートによるライフスタイルへの影響というのはありますか。

前澤:僕の場合、「この壁にこんなのが欲しい」という感じで買うんです。作品がいくら良くても、飾る場所がないと意味がないですから。好きなアーティストのこれぐらいのサイズ、というのを探すタイプです。

石坂:前澤さんはプロのアドバイスも参考にしながら、実際アートフェア、アーティストのスタジオ、オークションにも自分で足を運び、世界的コレクターのところにも招かれる、日本人としては非常に稀な国際的レベルで活躍しているコレクターです。だから目利きのレベルも上がり、駄作を掴まされないし、国際的価格レベルで購入できる。多くのバブル時の日本人コレクターは、この逆をいっていました。

ー世界的なコレクターから招かれるというのは?

前澤:ご自宅に招いてくださるんです。これまでに20軒ほど訪問させてもらいました。だいたい広大な庭のある大邸宅で、屋敷中に喉から手が出るほど欲しいアートがあって、すごく勉強になります。

ー日本でもコレクター同士を招き合うようなことは行われているのですか。

前澤:なくはないですが、日本は“ライフスタイルの中のアート”というのが少ない。マニアックなコレクションや、ピカイチの作品を収集している方は結構いるんですが。残念ながら日本で“ アート” というと「投資のため?」と訊かれます。でも、僕の場合はその次元を超えて、ライフスタイルの中のアートという位置付けなんです。

石坂:そのためにも、今後バスキアのようなメジャーなアーティストはどんどん美術館が買い上げていくわけですから、やっぱり今、手に入れる価値はありますね。

前澤:美術館に入ったら、ほぼ買えないですから。経営破綻するとか以外は。

石坂:アメリカの美術館でも、他の作品を買うために売るということはありますけれど、それでも最高傑作は残しておく。

前澤:変な話、美術館に行くよりも、オークションのプレビュー会場に行ったほうが、一気にいいものが見られますよね。

石坂:確かにすごい時はプレビューに1日4,000人くらい来ます。

ーそれは入札に関係なく、一般の人も見られるんですか。

石坂:誰でも入れます。

前澤:しかもぜんぶ買えるんですよ(笑)。美術館に行ったって買えないですもんね。アートとともに生活する醍醐味
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編集=堀 香織

この記事は 「Forbes JAPAN No.25 2016年8月号(2016/06/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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