58歳の孫も、当初予定していた2年後のCEO交代について自身の考えを変えたことがアローラ辞任の理由だと説明している。孫は声明の中で次のように述べている。
「ニケシュは事業戦略とその実行において比類なきスキルを持った非常に稀なリーダーです。グローバルビジネスのCEOとなりえる人物であることから、私の60歳の誕生日にソフトバンクグループの経営を引き継いでもらおうと考えていました。その一方で、私はまだやり残した仕事があると感じていました。ソフトバンク2.0の構想をより強固にし、スプリント・コーポレーションを真に甦らせ、またその他いくつかのクレイジーな構想も実現したいと考えているからです。これらに取り組むには、少なくともあと5年から10年は代表取締役社長として当社を率いていく必要があります。この間、ずっとニケシュを当社のトップになるまで待たせてしまうことになってはいけないと考えました」
アローラは自身の決断について次のように語っている。
「ソフトバンクグループの変革においてマサを手助けし、変革の種まきができたことは非常に大きな経験でした。マサやソフトバンクチームの皆さんと楽しんで仕事ができましたし、これからの挑戦については自分自身楽しみにしています」
「ソフトバンク株は売却した」と発言
2015年3月、アローラはグーグルからソフトバンクへ移籍した際、165億5,600万円の報酬を受け取った。また、2016年3月期の報酬は約80億円に上っていた。
彼は辞任発表後、ツイッターで立て続けに投稿をしている。そのうちの一つでは、保有するソフトバンク株を売却したかというフォロワーからの質問に対して次のように答えている。
「売却は既に完了している」
アローラは、ソフトバンクが保有するアリババ・グループ・ホールディングの株式を70億ドル分売却したほか、ゲーム子会社スーパーセルを中国インターネットサービス大手のテンセント(騰訊)に76億ドルで売却するなど、財務強化を主導してきた。
その一方で有力ベンチャーへの投資を積極的に進め、中国の配車サービス最大手「滴滴出行」やインドの配車サービス「Ola cabs」などのユニコーン企業に対し総額40億ドルの出資を実行した。孫はこうしたアローラの経営手腕を「世界レベルの実行スキル」と高く評価していた。
アローラの辞任は6月21日の取引終了後に発表された。ソフトバンクの株価は同日1.4%上昇した。