両社はこの取引を「ECとリテールの力強い同盟」と強調し、商品の選択やサプライチェーン分野で協業する方針を示した。ウォルマートは、単独では中国マーケットを攻略できない事実をようやく受け入れたとも言える。中国で432店舗を運営する同社は、一号店をオンライン事業のけん引役と期待し、2015年に株式の完全取得に踏み切った。
しかし、その後間もなくサイトの創業者であるユー・ガン(於剛)とリウ・ジュンリン(劉峻岭)らが辞職した。辞職の理由は公的には明らかにされていないが、一号店はウォルマートの支配下から脱しようと苦闘していた。
一号店の業績は2013年以降公式に発表されていないが、北京のiResearchによると、2兆元規模の中国BtoCオンラインショッピングマーケットにおいて、アリババが58%、JD.comが23%のシェアを持つのに対し、一号店のシェアはわずか1.3%だった。
香港のアナリストは「一号店自身に価値はない。名前があるだけだ」と厳しい評価をした。
JD.comは売上約3兆円
JD.comは一号店を継承することで、日用製品の供給に関してウォルマートの資源を活用できると期待する。JD.comの昨年の売上高は280億ドル(約2兆9,000億円)だったが、純損益は14億ドル(約1,460億円)の赤字だった。電気製品の販売を主力とするJD.comにとって、リピート客を呼び込める日用製品は強化したい分野だ。
上海のリサーチ会社のアナリストは「中国のEC企業は、購入頻度が高く、ブランド力の強化につながるオンラインの食品販売に大きく注目している」と説明する。
しかし、ウォルマートが自身のリソースをJD.comに開放するかは別問題だ。ウォルマートのJD.comへの出資比率はわずか5%しかない。一方テンセントは2014年後半にJD.comの株式の15%を取得し、JD.comのECサイトは7億人以上のユーザーがいるテンセント傘下のWeChatの決済サービスと連携した。
今回のウォルマートとJD.comの取引は、パートナー関係の構築とは呼べないとの指摘もある。ウォルマートは足手まといの資産を処分したとも見られる。関係者は「JD.comはリアル店舗との提携を必要としている。ウォルマートとの関係も将来進展する可能性がある」と述べた。