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2016.06.24

安藤忠雄も賛同、地元北海道への貢献を目指す「北菓楼」の取り組み

北菓楼および親会社である堀製菓の代表取締役社長を兼任する堀 安規良 (photo by Isamu Ito)

北海道札幌市で、旧文書館別館として親しまれてきたセセッション様式の堂々たる洋館。大正15年に北海道庁立図書館として建てられて以来、北海道立美術館、北海道立三岸好太郎美術館と、時代とともにその役割を変えながらも市民に愛されてきたランドマークのひとつである。

この歴史的建造物を修復・改築し、「北菓楼 札幌本館」としてオープンさせたのが、「北海道開拓おかき」「バウムクーヘン 妖精の森」などの人気北海道スイーツで知られる北菓楼である。同社は今年25周年、また親会社となる株式会社ホリは60周年。そのことを祝す記念碑的事業でもあった。

「お菓子づくりは、人を笑顔にできる夢のある仕事です。北海道のお菓子屋として、すでに他界している父と兄の積み上げてきたものがあって、今は兄の息子と私の息子が手を携えて経営に加わっています。次世代のフェーズの始まりにふさわしい場を用意してやりたい-そんな想いがあったところに、幸運もあって、この貴重な歴史的建造物を譲り受ける好機に恵まれたのです。これまで当社を育ててくれた地元北海道に何か貢献をしたい、今思うとそんな想いにも衝き動かされたのだと思います」

そう語るのは、同社および親会社であるホリの代表取締役社長を兼任する堀 安規良。規制上は高層建築も可能な敷地にあって、だが堀は既存の建物の外観を保存しながら、内部にモダンでかつエレガントな空間を新たに創造するという選択肢を取る。設計を依頼した先は、世界にその名を知られる大建築家、安藤忠雄であった。

「かねてから尊敬する安藤先生を思い切って訪ね、想いの丈を伝えたところ、まさかとは思いましたが設計を引き受けていただけた。『北菓楼 札幌本館』として生まれ変わったこの建物では、北海道産の素材にこだわったお菓子を販売するだけでなく、さまざまなイベントを発信し、また絵画コレクションや図書なども展示します。札幌市民の皆さんに、おいしいお菓子を囲んで文化的な交流を愉しんでいただけるような、『サロン』として愛される場所に育っていってほしいと思います」

目を細めて語る堀の目には、若き次世代の担い手たちによって、「おいしい笑顔」を提供するお菓子屋としてさらに成長した100年先の未来が見えているに違いない。

ほり・あきら◎1953年、北海道砂川市生まれ。東北薬科大学卒業後、75年武田薬品工業株式会社入社。81年合資会社堀製菓入社。82年株式会社ホリ設立。2007年より北菓楼社長を兼務。薬剤師の資格も持ち、安心・安全、健康の側面からもお菓子づくりを考える。

文=Forbes JAPAN編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.23 2016年6月号(2016/04/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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