谷本有香(以下、谷本):お二人の出会いは、知人のご紹介だったそうですね。
樋原伸彦(以下、樋原):知人がシリコンバレーでの起業準備をしている際、ベンチャーキャピタリストの1人としてアニスさんに出会ったんです。知人の起業は上手くいきませんでしたが、彼とアニスさんの交流はその後も続き、僕を紹介してくれたのが最初です。
アニス・ウッザマン(以下、ウッザマン):樋原先生とは考え方の似ている点が多くて驚きました。
私がCEOを務めるFenox Venture Capital(以下、フェノックス)はシリコンバレーを中心に日本でも投資を行なっており、昨年の投資実績は日本だけでも約24億円あります。反対に、日本企業からフェノックスのファンドに投資していただき、我々はそれを運用しています。彼らが何故わざわざ我々のような米企業に投資しているのかというと、アメリカの最先端のテクノロジーやトレンドを把握したいというニーズを持っているからです。
樋原先生と初めてお話しした際、先生も日本企業がイノベーションを起こすためには、フェノックスのような海外のVCがGP(general partner)として活躍する必要があると考えていらっしゃるように感じました。先生もおそらく、我々が先生のお考えに近い仕組みを持っていることに驚かれたのではないでしょうか。
谷本:樋原さんから見たアニスさんの第一印象は、どのようなものでしたか?
樋原:ベンチャーキャピタル(以下、VC)というのは、とてもドメスティックなのが一般的です。ほとんどのVCは、自社から車で1時間以上かかる企業には投資しないという調査結果が出ているくらい、とてもクローズドな環境で、知っているLP(limited partner)からしか出資を受けないし、投資先はほとんどシリコンバレーのスタートアップというのが基本スタイル。
フェノックスは、LPとしても海外から資金を集めているし、投資先もアメリカに限らず、幅広い国々を対象とされているなど、非常にユニークな存在です。
谷本:本来ならばドメスティックなものをグローバルに展開されているのは、どのような背景があるんですか?
ウッザマン:フェノックスを立ち上げたのは2011年。シリコンバレーで起業し、最初は近隣のスタートアップへの投資がメインでした。現在も投資先の5-6割は米企業です。
2012年頃、アジアに注目し始めました。一般的にアメリカのVCがアジア展開を考える際、対象となる国は中国やインド、シンガポールばかりで、日本は視野に入っていません。
しかし私は日本で勉強した経験もあって、日本から展開したいと思ったんです。最初の投資先は「秘密結社鷹の爪」のキャラクターをもつ株式会社ディー・エル・イー。その後インドネシアやシンガポールでも投資を始めて、アジア各国に拡大していきました。