どの国の経済にも常に、リセッションの可能性はある。さらに、IMFが「ブレグジット(英国のEU脱離)」が及ぼす影響について正確に理解しているとは思えない。どちらかといえば、彼らは近い将来に起こる“かもしれない”ことについて、ただまとめて述べているにすぎない。つまり、EUの現行の規則では、離脱に向けた手続きの完了までには最低でも2年かかることを忘れているのだ。
報告書は、次のように警告している。
「2019年の英経済見通しについて、EUから離脱すれば実質国内総生産(GDP)が離脱しない場合に比べ、最悪の場合5.6%減少する可能性がある」
「ブレグジットは、近い将来の英経済における最大のリスクだ」。さらに、実質的な経済的影響は恐らく「かなりのマイナス」だという。
IMFはブレグジットの影響に関してこれまで示された予想の中で、最も厳しい見方のひとつを示した。ただし、英経済が現在よりも5.6%縮小すると明言している訳ではない。考え得る影響には幅があるとした上で、離脱すればそれだけ縮小する可能性があると述べているだけだ。
英ガーディアン紙は6月18日付けのこの問題に関する記事に、「ブレグジットは英国にリセッションを招くだろう、IMFが指摘」との見出しを付けたが、この表現は適切ではないといえるだろう。
指摘はあくまで「可能性」
景気後退とは、経済成長が予想を下回ることではない。実際に経済が縮小することだ。報告書は英経済の2017年の経済成長率が0.8%のマイナスに転落すると指摘しているが、それはあくまでEUから離脱し、2019年のGDPが5.6%減少すると見込まれる場合に、というシナリオの中での仮説だ。
つまり、ブレグジットは景気後退を起こす可能性があるが、恐らくはそれは起きないともいえる。この報告書でより関心を引かれる点は、ブレグジットよりもここ数年の英経済に関する見方だ。