マイクロソフトが「2.8兆円」投じたリンクトイン 会員4.3億人が生む巨大な利益

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有料プレミアム会員事業:
リンクトインの登録会員数は4億3,000万人だが、1Qでの会員の純増数は2014年の初め以来最大となった。有料プレミアム会員事業の売上高は前年同期比22%増の1億4,900万ドルとなった。会員数は全世界で堅調に伸びているが、特に中国での成長が目覚ましく、同国でのアプリ会員数は2,000万人を突破した。リンクトインはこれまでコンシューマ向けプロダクトの機能改善に取り組んできたが、その効果が出始めている。1Qに職探しでリンクトインを利用したユーザー数は前年同期比で50%増え、650万件を超える求人情報が掲載された。現在の月間アクティブユーザー数は約1億500万人に達している。最近実施したアプリの機能強化の結果、ページビューや1日当たりのシェア数といったエンゲージメント指標が大幅に向上しているという。リンクトインは今後、サイト上で給与データも公開する予定だ。

セールスソリューションズ事業:
コア事業以外では、「セールスソリューションズ事業」が堅調に成長している。リンクトインにとって同事業は長期的な注力分野であり、営業プロフェッショナル向けツールの「セールス・ナビゲーター」を主力システムに育てることを目指している。1Qにはセールス・ナビゲーターにCRMシステムを統合し、ユーザーの利便性を向上している。

教育事業:
リンクトインにとって教育事業はもう一つの長期的な注力分野だ。昨年は動画教育サービスのLyndaを15億ドルで買収している。Lyndaに対する法人顧客からの需要は増加しており、教育事業の売上高は1Qで5,500万ドルに達した。現在、Lyndaでの学習課題はエクセルなど、マイクロソフトのサービスと連携できるようになっている。Lyndaの人気コース上位25のうち、6つがマイクロソフトのプロダクトに関連したもので、サービス連携は自然な流れだと言える。「教育は私にとってもナデラにとっても優先度が高い事業だ。人々は、常時受講できる教育コースや、継続的な教育機会を求めている」とワイナーは話す。リンクトインによると、1Qにおける外部パブリッシャーへの送客数は前年同期比で150%以上増えたという。現在、同社はオリジナルの教育コンテンツを制作中で、同社傘下のスライドシェアをはじめとするツールの利用者数を増やす方法を模索している。

世界経済の地図化:
リンクトインは世界中のあらゆるビジネス・プロフェッショナルや企業、職業、教育機関などのつながりをデジタルマップに落とし込み、可視化しようとしている。ワイナーはこのデータを「世界経済の地図」と呼び、人的資本を含めた様々な資本の循環を促して世界経済の発展に貢献したいとしている。

マイクロソフトによる買収価額は、先週金曜日のリンクトイン株の終値を50%上回っており、他に買収に名乗りを上げる企業は現れないだろう。リンクトインは今年2月に市場予想を大きく下回る業績見通しを発表して株価が40%以上急落したが、今回の買収価額は下落以前のマルチプルに迫る水準となっている。

リンクトインは2002年に現在の取締役会長であるリード・ホフマンらが創業し、2011年の上場時には2004年のグーグル以来の大型IPOと騒がれた。長期的な成長に対する不安から、株価は今年に入って42%下落していたが、6月13日にマイクロソフトによる買収発表を受けて47%上昇し、192ドル26セントをつけた。一方、マイクロソフトの株価は同日2.6%下落して50ドル14セントとなっている。

編集=上田裕資

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